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残り8カ月とタイムリミットが迫る「Windows 7 EOS」を考察する鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/3 ページ)

2020年1月14日に、Windows 7やWindows Server 2008といったOSの延長サポート(EOS)が終了する。Windows XPのときのような騒動を回避すべく、さまざまな対策が行われているが、その現状を見ていこう。

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 Windows 7の延長サポートが2020年1月14日に終了する。StatCounterのデータによれば、2019年3月時点でのWindows 10の55.77%というWindowsのバージョン別シェアに対し、Windows 7は33.41%と約1年前の同水準だった時期と比較して大きな差が開きつつある。

 一方、既にサポート終了(EOS:End Of Service)まで9カ月を切った段階で3割超のシェアを持つWindows 7を今後どのような形で“モダンな環境”へと移行していくのか、残された課題は多い。StatCounterのようなWeb調査会社のデータが必ずしも実数を反映しているわけではないが、2020年1月14日のEOSを迎え、なおWindows 7に留まり続けるユーザーは一定数存在すると思われる。

 今回はこのWindows 7 EOSに関して、Windows 7のシェアにまつわる実際と、Microsoftを含む各社がWindows XPのときのような騒動を巻き起こさないようどのような取り組みを進めているのかを見ていこう。

Windows 7
Windows 10とWindows 7のシェア推移(出典:StatCounter)

問題は「“意識していない”ユーザー層」

 世間一般では、Windows 7のEOSが注目を集めているかもしれないが、Microsoft的には同じタイミングの2020年1月14日に延長サポートが終了する「Windows Server 2008」ならびに「Windows Server 2008 R2」と、同サーバOS上で稼働するケースが多い「SQL Server 2008」の2019年7月9日の延長サポート終了をまとめて「EOSを迎える製品群」としてユーザーに注意喚起を促している。

 そのWindows 7とWindows Server 2008について、2018年12月時点からEOSまでの稼働状況の推測値をMM総研がまとめたものをMicrosoftが紹介したのが下記のグラフだ。Microsoft自身はWindowsのバージョン別シェアなどの詳細なデータを公開していないため、このような形での第三者機関を使っての状況報告となる。

Windows 7
Windows 7とWindows Server 2008のEOSまでの稼働状況予測(MM総研調べ)

 下段のWindows 7のみに注目すると、2018年12月時点での国内のWindows 7稼働台数は法人市場で1600万台、個人向けでは1100万台となっている。これが多いか少ないかは判断が難しいところだが、Microsoftでは現在、同時点での法人市場でのWindows 7稼働シェアを同市場全体の10%程度とすることを目標としており、これが960万台であることを考えれば、おおよその法人市場の規模が想像できるだろう。

 Windows XPのEOSではTV番組なども巻き込んだ連日に及んだ報道の他、政財界からは「Windows XPのサポートをなぜ終了するのか?」というお門違いのクレームも聞こえてくるなど大騒ぎが繰り返されたが、EOSまで1年を切ったWindows 7について、Microsoftはさほど危機感を抱いていないようだ。

 まず、Microsoftが直接の顧客として接触機会の多い大企業や自治体では既にWindows 7 EOSを認知済みで、2020年1月までの新環境への移行のタイムリミットとなる「2019年内での(システム移行の)予算化」が進んでおり、Windows XPで後手後手に回った教訓が活かされる形で「前倒しでのアピール」が功を奏したことになる。

 Windows 7からの移行が間に合わないケースでも、必要最低限のものを除外しつつ「もし(残ったPCで)移行が間に合わなかったら」という保険の意味を込めて「Windows 7 Extended Security Updates(ESU)」に関する問い合わせが行われているという。意識の高い大企業の他、Microsoftが頻繁に接触を繰り返した地方自治体での準備はほぼ万端にあるといっていいのかもしれない。

 問題は法人市場における「中小企業」ということになるが、やはりWindows XP騒動で苦労したベンダーが多かったかどうかは分からないが、パートナー各社の努力でかなりの認知を得ているようだ。

 2018年12月時点での調査だが、「2020年1月」という月まで含んだ意識調査を行ったにも関わらず、直前の調査報告から6ポイントも認知が上昇している。後述するが、サーバからクライアントまで複数のシステムが動作する企業環境において、裏方のサーバ側はともかく、ユーザーが直接触れるWindows OSに対する理解が高いのは共通の事実のようだ。

 本連載でも何度か触れているが、Intelのプロセッサ供給問題で落ち込んだ2018年のPC出荷台数は後半にかけて徐々に盛り返しており、2019年第1四半期(1〜3月期)の段階ではWindowsのライセンス(特にPro向け)が2桁上昇を見せてMicrosoftの業績を押し上げたことからも分かるように、主に法人でのPC需要が高まっている。Microsoftによれば「Windows XPのときほどの極端な需要増(とそれに伴う反動)はない」と考えているとのことで、法人市場におけるWindows 7 EOS問題は比較的短期間で収束するのではないかと筆者は予測している。

Windows 7
組織規模ごとのWindows 7からの移行の意識調査
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