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新スマホのケースや保護シートが“ぴったり”作れる理由、作れない理由牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)

スマホのアクセサリーメーカーが製造販売しているケースや保護フィルムなどは、どうやって寸法情報を入手しているのか、不思議に思ったことはないだろうか。実物を購入してチェックするのが基本だが、中には当てずっぽうだったり、あるいはユーザーから現物を借用して寸法を測っていたりする場合まである。

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寸法チェックが終わった後の本体機器はどうなる?

 多くのアクセサリーメーカーは、このようにスマホやPCを実際に購入して寸法測定を行うことで、アクセサリーの出荷にこぎ着けているわけだが、この場合にちょっとした問題になるのが、用が済んだ後のそれらの機材の処遇だ。

 というのも、これらの機材は次から次へと届くため、使い終わった後の機材を放置しておくと、とんでもない量になるからだ(もったいない話である)。業務に転用できればよいのだが、それらの機材は購入時点で最も短納期な型番を選ぶため、業務用として使えるスペックを満たしていない場合も少なくない。

 とはいえ、モノは新品同然であるため、産廃として処分することは考えにくく、かといって中古販売店や社員に買い取らせるのも(主に経理上の処理が)面倒だ。何より、そこそこ手間の掛かる作業であるため、機材一つ一つについて処理を真面目に行っていると、これ自体が一つの業務になってしまいかねない。

 そこで一部のアクセサリーメーカーが行っているのが、機材の購入から最終的な処分までを、製品の製造を行う下請け業者に丸投げする方法だ。メーカーは必要な機材を選んで指示をするだけで、後は下請け業者が機材を購入して寸法をチェックし、メーカーに報告。使い終わった機材は、下請け業者の好きにして構わないという流れだ。

 もちろん機材の購入費や寸法測定などの作業費はメーカーに請求が行くわけだが、通常の製品と合算で請求が行くため、メーカーとして製品の原価として一括で計上できるし、製品を何千個も仕入れる費用と比べると微々たるものである。機材の処分もお任せなので、メーカーとしては手を煩わせずに済む。

 ちなみに、電気街にある中古スマホやタブレットなどの販売店で、発売から間もない新製品がなぜか売られていることがある。「なぜ発売直後のコレが?」といぶかるような一点モノの品が店頭に並んでいて驚くわけだが、これは上記のような用途に使われた製品を、メーカーの下請け業者が放出した品だったりする。

 これらの製品は、形の上では中古品となっているが、事実上の新品であるため、偶然にもこうした販売ルートを発見すれば、小まめにチェックすることで、新古品がおトクな価格で手に入れられる可能性がある。

 ただし前述のように納期優先で手配された品なので、PCの場合はCPUやメモリなどBTO対応のパーツは、最低限のスペックにとどまりがちなことに気を付けたい。

ユーザーから本体機器を借用するパターンも

 さて、アクセサリーの適合をチェックする方法として、ここまで書いた方法以外にあと二つ、実際に行われている方法がある。一つは、本体機器のメーカーからダイレクトに機材を回してもらったり、寸法情報を提供してもらったりする方法だ。

 本体機器のメーカーにとって、こうしたアクセサリーを作ってくれるサードパーティーは、非常にありがたい存在だ。というのも、こうしたアクセサリーのラインアップがどれだけ充実しているかによって、本体機器の売り上げに大きな影響を及ぼすからだ。

 外野から見るとコバンザメのように利益を横取りしているように見えるかもしれないが、決してそんなことはなく、頼もしいパートナーというわけである。

 そのため、何らかの機会に本体機器メーカーとアクセサリーメーカーとの間でやりとりが発生して、現場同士が情報交換するようになると、本体機器が発売されるタイミングでアクセサリーが同時リリースできるよう、アクセサリーメーカーに前もって情報を渡すケースも増えてくる。もちろんNDA(秘密保持契約)を結んでおき、製品の情報そのものが流出しないようにコントロールすることが前提である。

 もう一つ、メーカーが個別に行っているユニークな方法として、その本体機器を使っている個人ユーザーから一時的に製品を借用し、寸法を測定させてもらうという方法がある。

 例えば、スマホ保護フィルムのメーカーとして有名なミヤビックスのモバイルショップ「Vis-a-Vis(ビザビ)」は、ユーザーから製品を借用して寸法を測らせてもらい、お礼として完成した保護フィルム1枚をプレゼントするという、Win-Winの関係を構築している。この仕組みであれば、ニーズの有無自体も併せてチェックできるので、非常に優れた仕組みといえる。

 法人向けのデバイスでは、これに似た仕組みでアクセサリーが作られることがある。例えば、POS端末の専用カバーが必要だったとして、現場に製品を納める販売店からそうした案件の依頼が来た場合、メーカーはそのPOS端末を一時的に借用してサイズを計測し、カスタムのカバーを作る。ある程度の台数がまとまっていれば、非常においしい案件である。

 そうして専用カバーが出来上がれば、同じPOS端末を販売している別のルートに営業をかけ、販売してもらうことも可能になる。こうすれば、競合メーカーにない製品として一定の需要が得られるわけである。こうしたビジネスは、個人ユーザーを対象とした製品とはまた異なり、アクセサリーメーカーの稼ぎ頭の一つになっているのが、面白いところだ。

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