iOS機器の裾野を広げる新「iPod touch」 高まるWWDCへの期待(1/3 ページ)
Appleの世界開発者会議「WWDC 2019」を目前に控えた5月28日、「iPod touch」の新モデルが久しぶりに登場した。そこから見えるものを林信行氏が読み解く。
12年前、初代iPhoneで誕生したiOS機器。今では世界で数億人が使う一大プラットフォームであり、その豊富なラインアップも魅力の1つとなっている。
手頃な価格でiOSの魅力の全てに対応した新型iPod touch
2018年は、iPhoneだけでもiPhone XR、XS、XS Maxの3機種が発表され、iPadも手頃な価格が魅力の第6世代iPadから、つい最近発表されたiPad miniとiPad Air、さらには2種類のiPad Proが登場している。
これに加えて、2018年に登場した最新のiOS 12が、5年前のiOS機器までさかのぼってサポートすることを発表したため、発売が終了しているものも含め最新OSが使える現役iOS機器はなんと31機種にも上る。
先週、そこにさらに1機種が加わった。第7世代となるiPod touchだ。現在、発売中のiOS機器の中で最も手頃な製品(32GBモデルで税抜き2万1800円〜)となる。
例えば、子供のためにもう1台のiOS機器として、あるいは増えてきたIoT機器の専用リモコンとして、あるいはお店などで使うiOS対応の注文システムやレジ端末、さらには「この機種で動けば大丈夫」という開発者向けの動作確認用の1台など、その手頃さのおかげで用途は幅広い。
一応、最新のiOSが動くとはいえ、プロセッサもA10 Fusionで最新のA12 bionicより2世代も前のもの。仕事柄、最新のiPhoneを使うことが多い筆者は、つい見下して、できることはメール、Web、YouTubeや簡単なゲームくらいかな、というのが期待値だった。しかし、実際にはできないことを探すのが大変なほど、かなりオールマイティーに使えた。
例えばこれからのiOS機器で、ますます増えていくのがCoreMLという機械学習(広義のAI)の技術やARkitというAR技術を使ったアプリで、これらは共にプロセッサへの負荷も大きい。
iPod touchが搭載するA10 Fusionというプロセッサでは、プロセッサ名に「bionic」もついていないし使えないのではないかとちょっと思っていた。
だが、実は結構、普通に使えてしまって逆に驚いている。
例えばカメラの先に写る物体を認識してドイツ語での読み方を教えてくれる「Memrise」という語学学習アプリがある(料金を支払えば他の言語にも対応)。こちらも普通に問題なく使えてしまった。
またiOSに付属している、物の長さや面積をはかるARアプリ「計測」も普通に使えていたし、かなり負荷が大きそうなものでは現実の空間の中にアリスの不思議な国の世界観を再現するARアプリ「不思議の国のアリス.拡張現実(AR).アドベンチャー」も普通にプレイできてしまった。
むしろ、利用できないアプリを探す方が大変だ。
ようやく見つけたのは、Apple純正の「Clips」というアプリだ。アプリ自体は起動できるし、ほとんどの機能は利用可能なのだが、筆者が使っているiPhone XSなどだと「シーン」という機能を使って、自撮りしている自分の顔と背景とを認識して背景を差し替えるといったことをした際に、リアルタイムで映像効果をかけることができるのだが、iPod touchではこのシーンという機能のメニューそのものが出てこなかった。これはプロセッサ性能というのもあるが、それ以上に最近の機種と違ってカメラを1個しか搭載していない(だから立体視して被写体と背景を区別することができない)というのが主な理由だろう。
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