検索
連載

「iPhone 11」「11 Pro Max」を試して実感したカメラ大幅進化 そして将来の強みとは本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

9月20日の販売開始に先駆けて数日間、「iPhone 11」「iPhone 11 Pro Max」を試用した。進化したカメラの実力を中心として、実機に触れて試してみたインプレッションをお届けする。

Share
Tweet
LINE
Hatena

XS世代カメラを成熟させた11世代カメラ

 iPhone 11世代の内蔵カメラは、「A12 Bionic」を搭載したiPhone XS世代のコンセプトを推し進めたものだった。XS世代のカメラでは、露出が異なる2枚のフレームから明暗のディテールを適切に取り込み、1枚の映像にトーンマッピングするスマートHDRが導入されていた。

 iPhoneだけではなく、Googleの「Pixel」やソニーの「Xperia 1」、Samsungの「Galaxy S10」シリーズなど、小さなスマートフォンのセンサーで高画質を狙う製品は、少なからず、複数フレームの情報を用いて画質を向上させたり、画像を分析して機械学習処理で画像を修正する処理を加えている。

 機械学習によるカメラ画質の向上というと、Huawei製のスマートフォンに代表される「被写体やシーンに合わせ、こうあってほしいという理想的な色やトーンカーブ」に合わせ込む画像処理を想起するかもしれないが、必ずしもそればかりではない。

 iPhoneも数世代前には、やや恣意的な絵作りを特定のシーンで施しているように感じられたが、現在は被写体のディテール……質感を復元する方向で機械学習を成熟させているようだ。

 今回、端末をテストした日は雨模様で、決して撮影に恵まれた環境ではなかったが、それでもカーディガンの編み目などは、見た目に感じる質感が表現されていた。

iPhone 11HUAWEI P30 Pro 左はiPhone 11、右はHUAWEI P30 Proで撮影。カーディガンの質感描写で大きな違いが出た
iPhone 11HUAWEI P30 Pro 左はiPhone 11、右はHUAWEI P30 Proで撮影。iPhone 11はトーンマッピングと色再現の自然さ、それにクッションのテクスチャの的確さが印象的だ

 スマートフォンのカメラでS/Nを上げようとすると、細かなディテールを犠牲にしてでもノイズを平均化しようとするものが多い。iPhone 11および11 Proも条件が悪くなってくると、ノイズ除去の影響が見えてくるが、屋外での撮影では質感重視の写真となる。

 こうした質感描写の向上は、昨年から取り組んでいる複数フレームの情報を用いた高画質化処理が、最新SoCの能力によってさらに一歩進んだことが大きい。

 iPhone 11および11 Proのアウトカメラは、240fpsのカメラを用いてスマートHDRでのキャプチャーを行いながら(つまり毎秒120枚の静止画が生成されていることになる)、レリーズした前後のイメージも参照して最終的なイメージを生成している。

 Appleは複数フレームの「Fusion(融合)」と呼んでいる。年内に対応するというDeep Fusionは、この融合処理をより多くの枚数を参照して行うものだ。Deep Fusionでは最大9枚のイメージを融合することで画質を高め、従来比6倍に向上させた機械学習処理能力や20%高速化したNeural Engineをフルに回して、高画質化とディテールの強化を行う。

 この際、撮影モードは変更する必要がなく、条件がそろえば常にDeep Fusionでのレンダリングが行われる。

実用的だったナイトモード

 高速でマッチする画素を探索し、融合する処理を行うというアプローチが進化した結果、ナイトモードという、暗所での写真を高画質にする撮影モードも加えられた。といっても、この機能も使いこなす必要はなく、必要なシーンになれば必要なパラメーターで自動的に動作する。

 例えば、本来ならば2〜3秒の露出がなければ明るい画像にならないシーンでも、短いシャッター速度で多数の画像をキャプチャーし、画素間の相関を取りながら情報を融合していく。厳密には長時間露出ではないが、三脚を立てて長時間露出を行うのに近い明るさを得られる。

 長時間露光では被写体ブレが問題となるが、ナイトモードでは画素間の相関を取って合成しているため、手持ち撮影かつ相手が人間であっても、ジッとしていれば多くの場合、問題なく撮影できる。これが風景かつ三脚などの固定された場所だと、5〜10秒、あるいは手動設定では最大30秒まで情報を重ねることが可能。長時間露光と似ているにもかかわらず、被写体ブレの問題や手持ち撮影をある程度解決しており、想像よりもずっと実用的な撮影モードだ。

iPhone 11
暗く照明が落とされた飛行機内。実際はほぼ真っ暗だが、機内の雰囲気を残しながら十分な明るさの写真に仕上がる。ナイトモードで4秒。手持ちでの撮影
iPhone 11HUAWEI P30 Pro 左はiPhone 11のナイトモード、右はHUAWEI P30 Proで撮影

 また昨年と同様に盛り込まれているスマートHDRも進化しており、コントラスト感を損ねずに暗部、明部のトーンマッピングを行うよう微妙な調整が行われている。

iPhone 11
「スマートHDR」のテストで太陽に向けて撮影。全体のコントラスト感を維持しながら、建物の質感やディテール、雲の雰囲気まで含め、バランスよくトーンマッピングが行われている
iPhone 11HUAWEI P30 Pro 左はiPhone 11、右はHUAWEI P30 Proで撮影。iPhone 11のスマートHDRは以前よりも明部と暗部の落差が大きくなり、絵全体のコントラストを付けるとともに、暗部・明部の階調は極端に補正せず、肉眼の雰囲気に近くなった

 さらに動画においては、逆光への対応が明らかに良くなった。動画撮影時も、スマートHDR同様の処理でダイナミックレンジを拡大している(Extended Dynamic RangeとAppleは呼んでいる)が、点光源の多い室内で13mm相当の超広角カメラを活用した撮影を行ってみたが、特に何の工夫をすることもなく適切なトーンマップで撮影ができた。

iPhone 11での動画撮影。インカメラでも手ブレ補正、露出、ホワイトバランスともに安定し、歩き回りながらの照明環境が変化する中でも破綻がない
HUAWEI P30 Proでの動画撮影
iPhone 11
全身を入れたポートレートモードでのカット。人間の形状はうまく認識する。ただし、真後ろのサンドバッグが人物に近い距離、右のサンドバッグが遠くに描写された。髪の毛からの連続する黒の領域を誤認識したようだ
iPhone 11
広角カメラでのポートレートモードは人物以外の被写体にも対応。このサンプルでは、帽子のつばがうまく切り抜けなかった。何枚か撮影したが、どこかの切り抜きで失敗する。この辺りはソフトウェアのアップデートでの改良を期待したい

画角が拡大したインカメラは画質も向上

 インカメラはより広角になった上で1200万画素になっているが、画素数よりも画質そのものの向上の方がより印象的だ。2年ほど前のアウトカメラに匹敵する画質が実現されており、スマートHDRや動画撮影時のExtended Dynamic Range撮影も行える。もちろん、(毎秒120フレームとレートは半分だが)高画質化処理はアウトカメラと共通だ。

 縦位置のままインカメラに切り替えると、700万画素相当クロップされ、画角が従来と同等にまで狭められる。これは自分一人を撮影する場合には、こちらの方が便利だからという理由だ。もちろん、本来の画角に広げることもできる。

 そして集合写真を撮るために横に向けるとクロップが解除され、1200万画素での広い画角が得られる。

 室内撮影でも十分な実効感度があり、「TrueDepth」センサーを用いたポートレートモードもあって使いやすいインカメラとなった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る