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「macOS Catalina」を導入して分かった“iPadとの一体感” iTunesの廃止は問題なし本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

Mac向け新OS「macOS Catalina」の正式版がリリース。iPadをサブディスプレイ兼ペンタブレットとして利用可能にする「Sidecar」をはじめとする注目の機能、そしてiTunesの廃止など、インプレッションをお届けする。

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今後のSidecar対応アプリ増加に期待

 macOS上でペンタブレットに対応しているアプリは、そのままSidecarでiPadからの入力が可能なようで、まだCatalinaに対応していない現行バージョンの「Adobe Photoshop CC 2019」を立ち上げて入力すると、そのまま利用できた。

 ただし、ペン先を傾けて入力するなどApple Pencil特有の操作には対応できていない。また、ペン先の軌跡に対して正確にトラッキングはされるものの、入力から画面に反映されるまでの遅延時間はやや長めに感じた。これはPhotoshop側の処理の問題かもしれない。

 Appleは「Illustrator」「Photoshop」「Lightroom」「Final Cut Pro」「Maya」「Affinity Photo」などのアプリで、そのままApple Pencilが動作するとしているが、筆者はPhotoshopしか所有していないため、それらでの動作感や対応予定については、個々のアプリで確認していただきたい。

 CatalinaのSidecar対応アプリに関しては、「Mac App Store」で特集されており、上記以外にもたくさんのアプリが列記されている。

Sidecar App
Sidecar対応アプリは、「Mac App Store」でまとめて紹介されている

 ただ、現在の最新版Photoshopに関してはまだ未対応の可能性が高く、Mac App Storeでもフィーチャーされていなかった。前述した作業ウィンドウをiPadに送る機能も実装されておらず、iPad上のタッチ操作にも不完全な対応しかされていないからだ。

 例えば、拡大縮小はピンチ操作で簡単に行えるが、作業位置を変えるために2本指でドラッグすると、指の動きの数倍の速度でスクロールしてしまい、とても使えたものではない。

 一方、Lightroomでの動作はスムーズだ。また画面キャプチャーのマークアップなどでは、iPad内アプリと同等の操作感がある。Apple Pencilの傾き対応なども含め、アプリ側のSidecar対応が進めば自然と解決される問題なのだろう。

Lightroom
SidecarによるLightroomの動作はスムーズだ

 また現状では、Catalinaに標準搭載されているアプリ、Appleがリリースしているアプリの中にも、Apple Pencilに対応していないものがある。

 Appleの意図は分からないでもない。Sidecarの接続をキープした状態で、iPadのアプリは切り替えることができる。例えば、メモを手書きで書きたいならば、Macの「メモ」アプリを立ち上げてSidecar経由でApple Pencilでの書き込みをしなくとも、iPadのアプリでメモを取ればいい。PDFのマークアップを書き込みたいなら、iPadで書けばいい。

 必ずしもMac側のアプリがSidecarにフル対応する必要もないのだろうが、作業には流れというものがある。Macでマルチアプリの作業をしている中で、SidecarのApple Pencilを使った作業を挿入したいことはあるはず。

 iPadのアプリに切り替えることなく、Mac上の作業の延長線上で「iWork」で書き込みができれば便利だろうし、プレビューアプリでのマークアップもApple Pencil前提ならばもう少し操作感を詰められるはずだ。

 メモはiPadアプリの中でも最も基本的なものだが、それでもMacでの作業中にはMacのメモで作業したいことはある。できればMac(のSidecar)での体験と、iPadの体験はそろえてほしい。

 こうした問題はあるいは、iPadアプリの移植を容易にするCatalystアプリが増加することで解決してくれるのだろうか。Apple Pencilに対応したiPadアプリがMacに移植されるようになれば、Sidecarの有用性はさらに高まるだろう。期待しておきたい。

 (ごく個人的な希望としては、iPad側にキーボードが接続されている場合、iPadのディスプレイに向かいながら、iPadのキーボードで入力したいとも思うが、それはセキュリティ上、許されないのかもしれない)

iTunesがなくなったことは数時間で忘れる

 さて、6月のCatalina発表前後には「iTunesがなくなる」というニュースが話題になった。個人的にはそこまでiTunesが愛されていたことに驚いたが、恐らくCatalinaをインストールした後、数時間から、せいぜい数日でiTunesがあったことを忘れているだろう。

 なお、既に周知されているとは思うが、Windows版のiTunesはメンテナンスが維持される。

iTunes
Catalinaでは搭載されなくなった「iTunes」アプリ

 そもそもiTunesとは音楽をリッピングしてMacで(後にWindows PCも)楽しみ、自分だけのアルバムを編集してCDに書き込むアプリだ。もちろん、現在では全く異なる多機能なアプリになっていることは確かだが、本来はそういうアプリである。

 音楽を楽しむためのMac専用アプリとしてiTunesは生まれ、そこに「iPod」への音楽転送、音楽ダウンロード購入が追加され、音楽データのクラウド管理、アプリ、動画のダウンロード購入、Podcastの発信・受信、iOSデバイスの管理、そして加入型ストリーミング音楽サービスが加わってきた。さらに、ここに「Apple TV+」の機能まで取り込むというのはむちゃな話だ。

 iTunesの機能が音楽(Apple Music)、Podcast、映像(Apple TV)に分割されたのは、極めて合理的な判断だと思う(正確にはiOSデバイスの管理機能は「Finder」へと移植されたので4分割が正しいかもしれない)。

Apple Music
iTunesから分離した新アプリの1つ「Apple Music」。ストリーミング音楽サービスの利用はもちろん、既存のミュージックライブラリへのアクセスや、「iTunes Store」での新規購入もこちらで行う
Apple Podcast
iTunesの廃止とともに、音楽アプリとは別になった「Apple Podcast」アプリ
Apple TV
iTunesから分離した映像コンテンツアプリ「Apple TV」。独自の映像サブスクリプションサービス「Apple TV+」も11月1日(米国時間)に始まり、このアプリで視聴できるようになる

 またメディアの楽しみ方も変化してきている。音楽の場合、CDからダウンロードへと事業の中心が移りかけたが、近年はストリーミングが音楽流通の中心だ。既にiOSの「ミュージック」アプリがそうなっているように、Macの場合もApple Musicを中心にしたユーザーインタフェースにした方が、今後は合理的といえる。

 もちろん、従来と同じようにダウンロードした音楽は管理可能で、新たにダウンロード購入もできる。まだコンテンツ数は少ないが、Apple TV+に関しても同様のトレンドがあるため、いずれはストリーミング中心のアプリになっていくはずだ。

 分離したアプリは、いずれもiOS用アプリに類似するユーザーインタフェースとなっており(PodcastはCatalystを用いたiPad用との共通アプリ)、あっという間にiTunesを忘れると思う。

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