Appleは何故、ここまで声高に「プライバシー」保護を叫ぶのか?:Appleのプライバシー情報ページが一新(2/4 ページ)
日ごろからプライバシーに関する取り組みをアピールしているAppleが、Webページのプライバシーコーナーを一新した。その意図に隠されたものは何なのだろうか。林信行氏が読み解く。
個人情報の商品化が常態化していたインターネット産業
それにも関わらず、IT業界ではこれまで20年近く、多くのプラットフォーマーがどちらかといえば個人情報を搾取する側に回っていた。
元々は収益モデルなしで事業を始めた米Yahoo!、そしてGoogleが立て続けに広告事業を柱とした収益モデルに転換して大成功をする。今ではWebサービスと言えば広告モデル以外での展開は考えられないという人も多いかもしれないが、2001年にGoogle共同創業者が来日し、筆者がその1人であるラリー・ペイジ氏をインタビューした時点では、まだ「広告は1つの収益源になる可能性はあるが、それだけに頼るかは決まっていない」と語っており、「Don't Be Evil」を標榜していたGoogleは広告以外の収益源も、まだ模索していた。
しかし、ユーザーが検索した内容に応じて広告を表示したり、ブログやニュースサイトで閲覧している記事内容に合わせた広告を表示したりするなど、「最適化」をすることで広告のクリック率が大きく上がることに気が付き、その後、電子メールサービスもメールの文面に合わせた広告表示をするなどして、最適化のために獲得する情報量が次第に増えていった。
同じ頃に誕生した他のWebサービスもGoogleらが提供する広告サービスであったり、他の広告サービスを採用した広告依存型のフリー(無料)モデルやフリーミアムモデル(基本サービスを広告収入あるいは無料で提供し、より高度なサービスを提供するには有料会員登録を求めるモデル)を採用していた。
その中には、Facebookなどのソーシャルネットワークも含まれる。そしてそれぞれのサービスが、自社のサービスの利用を通して得られるユーザーの行動の観察結果を当たり前のように収集して、より正確な広告ターゲティングを行うためのデータとして売買していた。
ユーザーの購買活動と直接の接点を持つECサイトでは、ユーザーがどんな商品を検索/閲覧しているかといった自社内での行動を観察するだけでなく、ブログ執筆者やニュースサイトに商品を宣伝させるアフィリエイト広告を提供し、これを通してユーザーがどのようなサイトを渡り歩いているかの情報も収集した。
インターネットの世界では、ユーザーに無料で情報を提供する代わりに、その行動履歴の情報を収集しまくって、そのデータを商品として利益を得る行為が当たり前となっていた。
そんなところにビッグデータやAI(正確には機械学習)のブームが到来し、他社に負けない最適化を行うために、さらに多くのユーザー情報を獲得するという行為が加速する。
そのおかげでまるで「魔法」のように、ユーザーが求めていることを理解し、提供するサービスが増加した。その一方で、どこかを訪れると、訪問先に関連した広告がスマートフォンに表示されるようになり、人によっては「気持ち悪く」感じる現象が増えた。さらなる副産物として、先に紹介したケンブリッジ・アナリティカなど、プラットフォーマーから得た情報を元に、ユーザー心理を分析して最適化した広告が政治利用されるような事態まで発生している。いよいよ、社会問題として取り上げざるを得なくなってきた。
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