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PC周辺機器の公称スペックと実物が同じにならないメーカー裏事情牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)

PC周辺機器では、公称値と実機とでスペックがズレているケースはよく発生する。中でも「製品重量のズレ」と「ケーブルの長さ違い」はありがちだ。これらはどのようなプロセスで発生するのだろうか。

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OEM供給でよく起こる「ケーブルの長さ違い」

 一方のケーブル長については、OEM供給を受けている製品や、外部からの取売製品でよく発生する。

 理由は大きく分けて2つある。ひとつはケーブルの長さについて、どこからどこまでをケーブル長と見なすかという認識が、OEM供給元とメーカーとの間で食い違っている場合だ。ケーブル長が50cmと定められているところ、実際に届いたケーブルを見てみると、コネクターの端から端までが50cmで、ケーブルは45cmしかない、ということが起こる。

 これはまだ、誤差が数cmレベルでしか発生しないのだが、もうひとつ、ケーブルが異常に長いケースもよく発生する。例えば、製品スペックには1mと書いているが、実際には1.5mあるといったケースだ。これはOEMではよくある話で、ハードウェアに付属するケーブルが途中で在庫が尽きてしまい、手近で余っている共用の部材を流用したため、ケーブルの長さが変わってしまうケースだ。

 もともとOEMでは、供給元もケーブルはあくまでおまけで、手持ちの部材をサービスで付ければいいと考えている節がある。そのため不足しても新規に生産せず、在庫があるケーブルから近いものを探して流用してくる。ただし本来の仕様よりも短いと「配線したのに届かない」などとクレームになり、下手をすると回収になりかねないので、「長さだけは足りている」という条件で代替品を探すことになる。

 結果、1mと書いてあるのに実際測ってみれば1.5mあったという具合に、極端なズレが発生することになる。きっちりと仕様書で全長を定義しているにもかかわらず、こうした勝手な判断をしてくる海外業者は少なくない。中には初回ロットは仕様書通りの長さだったのに、途中から変わっていた、などといったことも起こりうる。

 ちなみにケーブルは長さ以外の正確なスペックが仕様書に明記されていないことが多いため、メーカーも了承した上で、途中のロットから仕様がガラリと変わることはよくある。例えばUSB 2.0仕様だったのが3.0になったり、あるいはLANケーブルでコネクターの形状ががらりと変わるといった具合だ。大抵は上位互換品へと置き換わるため問題にならないが、同一機種を購入したユーザーだけが「あれ?」と気付くことになる。

そして同じミスを繰り返すメーカー

 以上のように、こうした「製品重量のズレ」と「ケーブルの長さ違い」は、ある意味で他愛もないミスであり、大きな問題になることはまずないが、その製品がどのようなプロセスで作られているか、見る人が見れば判断できる手掛かりになっている。

 そして、そのメーカーが同じプロセスで製品を作っていれば、また同じミスが発生する可能性は高く、注意深くウォッチしていれば「このメーカーの重量は信用ならない」というのが透けて見えたりもする。そうしたところから製品作りを眺めてみるのも、また面白いだろう。

著者:牧ノブユキ(Nobuyuki Maki)

IT機器メーカー、販売店勤務を経てコンサルへ。Googleトレンドを眺めていると1日が終わるのがもっぱらの悩み。無類のチョコミント好き。HPはこちら


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