健康の未来を先取りしたApple Watch、タブレットの水準を引き上げたiPad:Good、Better、Bestで読み解く新ラインアップ(4/6 ページ)
Appleが恒例のスペシャルイベントを行ったが、メインのiPhoneは発表されず、新型iPadシリーズとApple Watchシリーズが登場したのみだった。しかし、その中には我々の未来に直結する重要なメッセージが盛り込まれていた。林信行氏が読み解く。
「血中酸素濃度」センサーに期待高まる健康の未来
発表会の主役はApple Watchで、ほぼ1時間ちょうどの発表会でも最初の40分はApple Watchに関する発表だった。そんなApple Watchの発表の中で、個人的に鮮烈に印象に残ったのが米国で展開される新しいApple WatchのCMだった。
今年で登場5周年を迎え、既に世界で最も売れている時計にもなったApple Watchであるにも関わらず、未だに「何に使うの?」と聞かれる製品でもある。
スマートフォンの通知を受けたり、フィットネスやワークアウトの記録を取ってくれたりすることは知られているが、アプリを一切いれないでも実に多くのことをやってくれるのがApple Watchだ。
発表会で披露された新CMでは、賢そうな声のナレーターが次々と未来を予言するのだが……。「いずれ機械学習ができる小さなコンピューターがあなたの睡眠を記録して健康的な暮らしを促進する日が来るだろう」と語ると、ベッドの上で寝ている女性が「それ、もうやっています」と最新のApple Watchを見せる。
その後も、ナレーターは次々と、未来のウェアラブルコンピューターが実現してくれそうな機能を語るのだが、ことごとく「既にやっているよ」とApple Watchを見せられフラストレーションを感じる。最後には「血中酸素を測る」というと、新たにこの機能に対応したApple Watch series 6を身につけた人が宇宙ステーションから「もうやっているよ」という札を見せ「未来の健康はあなたの腕の上に」(筆者訳)というコピーで終わる。
Apple Watchは最新のseries 6の前から、心身の健康を守るために既に把握し切れないほど多くの機能を提供してきた。そして多くの人が、どんな機能を搭載しているかの全体像は把握しないまでも、自然と使いこなし、恩恵に授かっている。
そんなApple Watchだが、消費カロリーや脈拍、心電図と違って、新たに計測が可能になった血中酸素濃度に関しては何のための指標かわからない、という人も多いかもしれない。
果たしてSEとの2万円ほどの価格差を正当化させる機能なのだろうか。判断は人によって分かれるところだが、このセンサーはヘルスケア機器、健康機器に詳しい人たちからは切望されていたものだ。
血中酸素とは、血液の中でどれだけの量の酸素が運ばれているかを測った指標で、これが一体、どのような健康管理に役立つのかは未知な部分も多い。
ただ、例えば睡眠時無呼吸症などを患うと、この量が減り低酸素血症という脳などへの障害をもたらす深刻な症状を引き起こすことがあり、そうしたことへの対処にも、これを測る専用の医療機器が使われている。
血中酸素濃度は、コロナ禍になって、さらに大きな注目を集めた。というのも、この変化を測ることで、療養中の軽度なCOVID-19感染者の肺炎を早期発見できると期待されているからだ。こちらも実際に専用の医療機器が軽傷者宿泊施設などで利用され始めている。
Apple Watchが提供する血中酸素濃度センサーは、許認可上はあくまでもウェルネスとフィットネス目的のためとされており、計測に使われるアプリの日本語名も米国での発表直後にウェルネスを強調した「血中酸素ウェルネスアプリ」となった。
ただ、この注目の指標が、見た目も美しく、1日中身につけている人が多いApple Watchで測れるようになったことに、大きな意義を感じる医療関係者は少なくない。
特に米国では、医療機器として認可されていないヘルスケア機器は、その分、日常生活の中でのユーザーの身体データーを拾っているので、医療機器で計測するデータとは別の高い価値があると考える医療関係者が多く、いくつかの機関がAppleと組んで、血中酸素濃度の活用に関する新たなリサーチを始めているようだ。
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