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新「iPad Air」実機チェックで判明した“Pro顔負け”の高性能 Apple Silicon Macはどこまで速くなるのか本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

iPhone 12と同時に販売が始まる第4世代の「iPad Air」。新デザインのボディーはiPad Proとよく似ているが、実際にテストしてみると、性能もiPad Proに近いものだった。登場を控えたApple Silicon搭載のMacはどこまで性能が引き上げられるのだろうか。

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iPad Proに近いiPad Airのベンチマークテスト結果

 ということで早速、定番のベンチマークテストである「Geekbench 5」を実行した。

 シングルコアのスコアは1587で、これはIntelの第11世代Core i7-1165G7、すなわちTiger Lake(開発コード名)のCore i7モデルと同程度のスコアだ。

Geekbench score 1
iPad AirのGeekbenchスコア(CPUのシングルコアとマルチコア)

 A14 Bionicは高性能コア2つ、高効率コア4つの構成であるため、4コアのTiger Lakeよりもマルチコアのスコアは落ちる。それでもA14 Bionicの4248に対してTager Lakeの典型的な薄型ノートPC搭載機は5400程度(熱設計に強く依存するので参考例としてみていただきたい)となるため、コア数の差ほどには変わらないと思われる。

 iPad Airの薄さやファンレス設計であることを考えれば、そもそもノートPCと比べてこの程度の差に収まる方を褒めたいところだ。

 そして、この値はiPad Proが搭載するA12Z Bionic(高性能コアを4つ搭載)の4650前後というマルチコアのスコアにも迫る。A12Z Bionicはクロック周波数が2.5GHzで、A14 Bionicの3GHzより低いとはいえ、高性能コアの数が半分ということを考えれば、A14 Bionicも健闘している。何しろiPad Airが搭載するSoCは、小さなスマートフォン向けに開発されたものなのだ。

Geekbench score 2
12.9型iPad ProのGeekbenchスコア(CPUのシングルコアとマルチコア)

 iPhone 12・12 Proで計測した場合のマルチコアスコアは3950で、iPad Air搭載時に得られる熱設計面でのアドバンテージがスコアに出ているのだろう。

 GPUの計算能力を示すComputeの値で見ると、熱設計の違いによるスコアの伸びはさらに顕著で1万2232となる。iPhone 12 Proの9357に比べると3割ほどの向上だ。

Geekbench score 3
iPad AirのGeekbenchスコア(GPU・Compute)

 Geekbench 5のスコアはiPad OSのアップデートでMetalスコアが上がっており、iPad Proに搭載された8コアGPUのA12Z Bionicも約1万2000程度の値を出す(以前は9300程度だった)のだが、A14 Bionicがそれよりもさらに上のスコアを半分の4コアGPUで出したのは予想外だ。

より実際のアプリ動作に近いテストでは「Proらしさ」も

 もう少し実際のアプリに近い実装の処理ということで、ベンチマークテストの「Antutu Benchmark V8」を動かしてみた。

Antutu score 1
iPad AirのAntutu Benchmarkスコア

 結果を見ると、CPUのスコアはわずかながらiPad Proが上回る程度でほぼ同等だった。一方のGPU性能はiPad Proが1.5倍程度を示しており、コア性能が上がっているとはいえ、コアの絶対数が2倍あるiPad Proの実力値に近いと思われる。

Antutu score 2
12.9型iPad ProのAntutu Benchmarkスコア

 iPad Proが搭載するA12Z Bionicは、CPU、GPUのコア数を増やすためにメモリの接続帯域が拡張されており、マルチコアでの動作がスムーズになるよう設計されている。17%程度メモリ帯域が広いと計測されるのはそのためだが、上記のGPUスコアに影響を与えている可能性がありそうだ。

 共有メモリアーキテクチャを採用するAppleのSoCは、CPUとGPUの総合パフォーマンスがメモリ帯域に制約を受けるはずなので、実際のアプリ動作ではさらにiPad Proが有利になるかもしれない。

 と予想しながら、アドビの「Lightroom」と「Premiere Rush」のテストに移った。

 Lightroomのテストは、「RICOH GR III」で撮影したRAWファイルを20枚現像する時間を計測。この処理は恐らくだが、ほぼCPUが担当する(LightroomがGPUを使うのはプレビュー生成時)。結果はiPad Airの33秒に対してiPad Proが34.5秒でほぼ同じといっていいだろう。

 次にPremiere Rushのテストだが、こちらはテロップや複数動画の合成などでGPUが寄与する度合いが大きい。またメモリ帯域もiPad Proに有利に働くと思われる。あるフルHDの動画編集プロジェクトをPremiere Rushで書き出したところ、iPad Proが24分26秒で終了したところiPad Airは30分12秒だった。やはりiPad Proが高速なのだが、iPad Airの処理能力も捨てたものではない。

 というのも、Ice Lake(開発コード名)世代の「MacBook Pro」や「MacBook Air」よりも高速だからだ。同じプロジェクトをMacBook Proの上位モデル(Ice Lake搭載のCore i5モデル)で書き出した場合は35分11秒、MacBook Air(Ice Lake搭載モデル)では57分4秒の処理時間がかかった。

 Premiere Rushという限られたアプリでの快適性とはいえ、MacBook Proを上回る速度なのだから十分に高性能だ。

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