AppleがWWDC21で示した情報操作の未来:WWDC21レポート(1/4 ページ)
Appleが開催した開発者向けイベント「WWDC21」。そこから見えてくるものを五つの視点で林信行氏が振り返る。
2021年秋に登場する新OSが一斉に発表されたWWDC21。詳細は、OSのリリース後に改めて触れることにして、前回のWWDCレポート記事では発表から見えてきた近未来のライフスタイルについて俯瞰(ふかん)した。ちょっとウケの良い「便利」ではなく、生活の質をしっかり根本から向上させる機能に、優良企業らしい姿勢を読み取ったのは筆者だけではないだろう
→・「AppleがWWDC21で示した巨大プラットフォーマーの責務」
この2本目の記事では、Appleが提供しようとしているこういった価値が、実際にスクリーン上でどのように表現されているのか、秋以降のOSで広がる新しい情報体験を「流麗な操作」「音の有効活用」「ARの融合」「インテリジェンス」、そして「美しさ」という5つの視点で振り返ってみたい。
流麗な操作:継ぎ目なく流れるように操作する
プロセッサから情報機器、OS、アプリ、そしてクラウドサービスまで、その全てを自ら開発し、1つの継ぎ目のない「体験」に織りあげるのがAppleの物作りだ。継ぎ目や引っかかりを感じさせないように、妥協しない洗練を重ねている点でも他社との差別化要因になっている。
今回のWWDCでは、MacやiPadといった複数のAppleデバイスを同時に使うために、新たに「Universal Control」という操作法が発表された。
Macの隣にiPadや別のMacを置く。その状態でMacの画面上のカーソルを左右どちらかの端の外へと動かすと、そのカーソルが隣に置いた別のMacまたはiPadの画面に現れ、その機器を操作できる。1つのトラックパッドやマウスとキーボードで、複数のApple製品を扱えるのだ。
例えば、携帯性に優れたMacBook Airと大画面と迫力の音響が楽しめるiMac、あるいはApple Pencilで手描きができるiPadなど複数の機器を使う人の作業が大きく変わりそうだ。iPad上で描いていた絵をドラッグ操作でMacの画面に移動といったことができる、Appleらしい直感的な設計になっている。
機器間の継ぎ目がない連携と言えば、もう1つ無視できないのが「MacにAirPlay」という機能だ。iPhone、iPadさらにはMacで表示されている画面や再生している音楽を、その部屋にある一番画面が大きいMac、一番音質の良いMacを使って表示/再生する機能だ。
会議中にiPhoneで用意していた資料を、ミーティング相手のMacBookの画面にAirPlayして投影したり、iPhoneで再生している音楽をどうせならとスピーカー品質で定評があるiMacに飛ばしたりといったことができる。
流麗と言えば、もう1つ思いつくのが新しいSafariだ。Safariは、おそらく登場以来、最大規模の操作の見直しが行われた。Mac版でもブラウザの上に並んでいたさまざまなアイコンが全てなくなり、「アドレスと検索」を入力するエリア内の「…」という項目内に整理/集約されている。
また、開いていたタブ(同じウインドウ内で同時に開いている複数のWebページ)を、例えば「リサーチ」「旅行計画」「趣味」など名前をつけたグループに分けて保存/再現できる「タブ・グループ」という機能が用意された。
しかし、何といっても大きく変わったのがiPhone版の操作画面で、「アドレスと検索」バーを指が届きやすいように画面の下に移動したのだ。新しいSafariではWebページは常に全画面表示が基本となる。画面の一番下に、現在表示中のWebページのアドレスがグレーのバーで表示される。別のWebページを開きたくなったら、ここをタッチするとアドレスバーが現れるので、URLを打ち込んだり、声で入力したり、お気に入りのメニューから選んだりできる。
いや、それだけではない。このアドレスバーがツマミになっていて、ここを左右にドラッグしてタブを切り替えることもできるのだ。
Mac、iPad、iPhoneのいずれでも極めて使う頻度が高いSafari。このすっかり慣れた操作画面も果敢に見直して進化を促すあたり実にAppleらしいといえよう。
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