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新ハードや新サービスには真っ先に飛び付くべきか メリットとデメリットを考える牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

新しいサービスやハードウェアに真っ先に飛び付く人は少なくないが、あまりに早いタイミングで飛び付くことによるデメリットはないのだろうか。またサービスとハードウェアとで、それらに差はあるのだろうか。幾つかの例を挙げながらそれらを分析する。

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 音声SNSの「Clubhouse」が突如としてブームになったのは記憶に新しい。もっともブームから数カ月が経過した現在、ネットで話題になる機会は激減している。Googleトレンドで見ると、ピークだった1月末時点に比べて人気度は数十分の1へと低下しており、あれだけあちこちで目にした「招待して」という声も、SNSでは全くといっていいほど見かけない。

 同サービスに人が殺到したのは、サービス自体への興味よりも、流行のサービスに乗っかっておかないと話題についていけなくなる、仲間から置いてきぼりになるという焦りがあってこそのものだろう。ブームが急速に沈静化したのも、長く続ける予定だったのがつまらないから辞めたのではなく、それらの「目的」を一通り達成したからと考えた方がつじつまが合う。

 これに加えて、早くユーザーになれば招待する側に回ることができ、仲間内でマウントを取れるという下心も、大きな原動力になっていたと推測できる。そうした人にとっては、早く参加することこそに意味があり、周囲が興味を失った今となっては、自分自身が続ける理由に乏しくなってしまったというわけだ。

 ところでこうしたオンラインサービスと同様、ハードウェアについても、新製品が出れば真っ先に手を出そうとする人は多い。毎回新しい製品が発表される度に購入の報告をしている人を見て、どこにそんな資金があるのかと、歯ぎしりしている人も多いだろう。

 こうした、真っ先に飛び付くことで得られるメリットとデメリットは、オンラインサービスとハードウェアとで違いはあるのだろうか。今回はこの両者を比較しつつ、具体的なメリットおよびデメリットを、それぞれ考察してみたい。

オンラインサービスは真っ先に飛び付くのがおトク

 先に結論を書いておくと、注目され始めている新しいオンラインサービス、中でも課金が発生するサービスは、運営元やサービス内容が怪しい場合を除けば、基本的に真っ先に飛び付くのが得だ。サービス開始直後は利用者を増やすのを目的にさまざまなキャンペーンが行われること、そして時間がたつにつれてその内容に制限が加わり、おトク度が低下していくことがその理由だ。

 ここ1〜2年の例でいえば、QRコード決済サービスや各種デリバリーサービスがそうだが、サービスイン直後は、ポイントなどの優遇措置から採算度外視のクーポンまで、派手なキャンペーンが矢継ぎ早に行われる。ネットでの肯定的な口コミを発生させることを目的に別枠で予算が組まれ、大盤振る舞いとなるケースも少なくない。最近だと、電子書籍ストアのリニューアルで行われた70%オフクーポンもその類だろう。

 もちろんこの代償として、トラフィック増でサーバがダウンして予定のサービスを受けられなかったり、あるいはUIが使いにくかったりと、サービスがこなれていないが故のトラブルが発生することもある。実店舗と連動するサービスであれば、店舗などに足を運んでからサービスを受けられないことが分かり、がっかりすることもあるかもしれない。

 しかしこの段階で悪評が広まれば、サービスの継続が難しくなることから、最終的に何らかの形で補填(ほてん)されることも多い(ゲームにおける「詫び石」もその一つだ)。またサービスの不備を突いて恩恵を被ることもあるので、トータルでマイナスになることはまずない。何よりサービスが軌道に乗ってしまえば、こうした大盤振る舞いで予算が組まれることは二度とないので、様子見する必要はないのだ。

 また冒頭で述べたClubhouseのように、それ自体への興味関心よりも、仲間外れになりたくないという不安がベースになっている場合でも、意固地になるよりさっさと参加してしまった方が気持ちは楽になるわけで、そうした意味でも早めに飛び付く意味はある。オンラインサービスにおいては、ユーザー登録が早ければ早いほど、お気に入りのアカウント名を確保できるという現実的な理由もある。

 これらをまとめると、話題のオンラインサービスでは、真っ先に飛び付くのが吉であり、「落ち着いたら使ってみよう」という考え方だと損をしがちだ。これらの法則が当てはまらないのは、不備があっても補填のしようがなく、悪評が出たところで今後の運営に痛くもかゆくもない、行政機関のオンライン申請サービスくらいかもしれない。

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