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メーカーカタログに突如現れる「他社製品」の謎 あえて取り扱いをアピールする理由牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

PC周辺機器メーカーのカタログやWebサイトを見ていると、そのメーカーのブランドではない他社の取り扱い製品が掲載されていることがある。メーカーがこうした他社の製品をわざわざ売ろうとする意図はどこにあるのだろうか。もしかすると本家のメーカーから買うよりもお得だったりするのだろうか。

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 PC周辺機器メーカーのカタログやWebサイトを見ていると、そのメーカーのブランドではない、他社の取り扱い製品が載っているのを見かけることがある。例えば、PCデスクを販売するメーカーが扱っているサーバラックや、電源タップやケーブルのメーカーが扱っている無停電電源装置などがそれだ。自社とはギリギリ競合に当たらない製品なのがミソである。

 これらはOEM製品のように自社の型番を付けているわけではなく、元のメーカー名と型番そのままでカタログやWebサイトに載っているので混乱するかもしれない。メーカーがこうした他社の製品をわざわざ売ろうとする意図はどこにあるのだろうか。もしかすると本家のメーカーから買うよりもお得だったりするのだろうか。今回はそうした疑問にまつわるお話だ。

「品ぞろえのためのラインアップ」が必要なケース

 ズバリ言ってしまうと、メーカーのカタログやWebサイトにこうした他社製品が掲載されているのは、文教向け、つまり学校に製品を納入するにあたって、案件を丸ごと獲得するための「品ぞろえのためのラインアップ」であることが多い。

 学校にコンピュータルームを設置するケースがあるとしよう。その場合、まず自治体側が必要な品のリストを作成した上で、複数の納入業者に声を掛ける。各納入業者はそのリストを見ながら、これはメーカーA社から、これは卸のB社から仕入れるといった具合に、仕入元と価格を具体的に詰めて、自治体の入札に臨むことになる。

 こうした中、リストの中にぽつんと、その納入業者の直接取引がない、特殊な製品が含まれている場合がある。前述のサーバラックなどはその典型で、デスクやチェア、さらにPC本体やその関連用品については、これまで付き合いのある仕入元が扱っているが、サーバラックだけはどこも扱っていない、といった事態が発生する。

 普通に考えれば、そのサーバラックを扱っている販売店にコンタクトを取って取引口座を開設することになるが、デスクはここ、PCはここ、そしてサーバラックはここと、仕入元があまり分散するのは管理上望ましくない。そもそも納入業者の中には、大手SIerもいれば、地元の事務用品店のような零細企業もある。後者の場合、販売店を見つけて見積を依頼しても、与信の関係で相手にされないこともある。

 こうした場合にどうするかというと、近いカテゴリーを扱う他の仕入先、例えばサーバラックであればデスクのメーカーに声を掛け、そのサーバラックを代理で仕入れてもらうよう依頼するわけである。

 そうすれば仕入元を増やさずに済むし、手配も全て任せられる。メーカーが仕入れ交渉をするとなれば、与信の問題で取引を断られることもまずない。さらに受注後に納期トラブルが起こっても、メーカーに責任を負い被せられるというおまけも付く。

 またメーカーからしても、そうした要望に従っておけば、納入業者が浮気をしてデスクの案件ごと競合他社に横取りされる可能性が低くなる。こうして、他社製品の受注販売という形で、他社のサーバラックを扱うようになる。

 そして一度こうした実績ができると、取り扱いが可能な他社製品をあらかじめカタログやWebサイトに載せておけば、大型の文教案件の度に声が掛かりやすいことがメーカー社内でも認知され、メーカーのカタログやWebサイトに他社製品が次から次へと掲載されるようになる。右から左に流しているだけなのでメーカーとしても利益はほとんど出ないのだが、大型案件が獲得できれば、チャラになるどころかお釣りが来るというわけである。

 このことは、他社製品を自社ブランドにしない理由でもある。なぜなら文教向けをはじめとする案件では、メーカー名と型番が指定されていることがほとんどだからだ。それ故、どれだけ取り扱いが増えたとしても、OEMとして自社型番を付けるようなことはしない。もし自社型番を付けてしまえば、見向きもされなくなるのがオチだからだ。自社の型番を付けて自社のルートでこれから市場を作っていこうとする製品とは根本的に異なる。

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