技術・家庭科で「Python」を ミクシィが中学校で「プログラミング授業」を実施(後編)(3/3 ページ)
渋谷区立鉢山中学校の技術・家庭科のプログラミングに関する授業に、「モンスト」などで知られるミクシィが協力した。この記事では、3回目と4回目の授業の様子を見てみよう。
ミクシィの担当者も生徒の姿勢に感銘
4回目の授業が終了した後、鉢山中学校のICT教育担当を務める松澤貴幸教諭、技術・家庭科の技術分野の授業を担当する磯部正則教諭、ミクシィの田那辺氏の3人から話を伺うことができた。
―― 4回の授業を終えた感想を聞かせてください。
田那辺氏 プログラムを自分で入力するというのは、それだけを見ると面白くないように見えがちなんですが、(生徒の)皆さんがちゃんとやってくれるということに、すごく感銘を受けました。「自分で入力したものが動く」ことによって、皆さんがいいリアクションを出してくれました。生徒の笑顔を目の当たりにすることができたので、教え甲斐があったと思います。
松澤氏 初見の先生方とか取材の方から見ると、(4回の授業が)かなり難しい内容に感じられたかもしれません。内容的に難しいことは間違いないと思いますが、今年度(2021年度)の2年生は前年度(2020年度)もプログラミングの授業を受けています。その下地がある所で授業を受けているという形なので、積み重ねによって継続的な学習につなげられたのだと考えます。
磯部氏 僕は今回初めて、技術科の授業におけるコラボという形で参加しました。内容がPythonということだったので、本屋さんに行って本を見てみると、本は一杯あるけれども、私が見た範囲内ではどれもすごく難しいなと(感じました)。これをどうやって生徒に教えていくのかという所から疑問に思っていたんです。
生徒たちも、初回は何となく難しそうな、眉間にしわを寄せるような感じでやっていたんですが、2回目、3回目と回を重ねるとやはりだんだんと顔色が変わってきました。特に3回目のキャラクターを動かす所で大きく変わったと思います。あれを見せた瞬間に生徒の顔色が変わって「え?」っていう感じで。「じゃあそれがなんで動くの?」といったときに、その種明かしじゃないですが、1回目、2回目とやってきたことが3回目に役に立って、今日(4回目の授業)につながったのだと思います。そういう所(積み重ねが生きること)が、生徒にとってすごくプラスになったんじゃないかと。
Pythonの全部は分からないとしても、一部分でも「あ、プログラミングってこういうものなんだ」っていうことが分かった子もいれば、もうちょっとレベルが高いところまで分かった生徒もいました。「もうちょいやってみたかった」という生徒もいるんじゃないかなと思います。
技術・家庭科の技術分野における「情報の技術」の授業時間は、(標準設定の場合)3年間で約20時間となっています。今回の授業(プログラムによる計測・制御)は、その一部です。本当なら(プログラミングの授業を)もっと続けてやってあげたいんですが、時間の関係もあって、今回は4回で終わりということになりました。
この4回をきっかけとして、今後生徒が自分から進んでやっていけばもっともっと伸びるんじゃないかなと期待しております。
技術・家庭科の「技術分野D(情報の技術)」は、3年間の中で約20時間学習することになる(標準設定の場合)。単純計算すると、今回の取り組みで全時間の約5分の1を消費したことになるが、本格的に教えるとなると時間は明らかに足りない
―― 渋谷区では「GIGAスクール構想」で区立学校の児童や生徒に1人1台の「Surface Go 2」がペンやキーボードと共に貸与され、他の授業でも使われているそうですね(参考記事)。そのこともあってか、打つスピードはさておき、思ったよりもキーボードに慣れている生徒が多い印象を受けました。ただ、Pythonでインデント(文字そろえ)ができていない生徒が多かったようです。また、普段の日本語ではあまり使わないせいか、アンダーバーを入れ忘れてプログラムが正常に動かないケースもありました。括弧の種類やコロン(:)とセミコロン(;)の違いなど、普段は気にしなくて良い部分における慎重さが求められそうですね。
磯部氏 実は先日、そのこと(文字の入力)について話し合いました。今度は別の学校で私と(ミクシィが)一緒に授業をやるんですが、おっしゃる部分、セミコロン、コロンとかアンダーバーの入力は教えていないんですよね。
私は1年生に(初めて)タブレットを渡す際の授業で、五十音と「A」から「Z」までのタイピング練習をずっとやらせていたんです。だから、生徒はみんなAからZまでは打てるんですが、それ以外のものについては教えていなかったのです。今回の授業をやっているうちに、「これはもうちょっと教えなきゃいけない」と思いました。
次の学校では11月に授業をやる予定ですが、10月中の1カ月間、試しに授業の冒頭5〜10分ぐらいを使って(タイピングの)練習をしてもらった上でPythonの授業に入ったらどうなるか、様子を見てみようと思います。
あと(Surface Go 2の)キーボードの刻印は「大文字」ですが、Pythonのプリントは「小文字」です。1年生の生徒の中には、そこ(小文字と大文字を区別しなければいけないこと)をよく分かってない生徒がいて、それをまた教えなきゃいけないですね。でも、そこまで教えていると、技術の授業じゃなくなっちゃうので……。
―― どうしてもプログラミングが得意な生徒とそうでない生徒の差はできるでしょうが、得意な生徒がそうじゃない生徒に教えられるというのもいいのかなと思っています。テキストや教材もよくできていると感じました。
田那辺氏 おっしゃる通り、生徒さん自身でレベルが選べる状況にもありましたので、友達に教えることもできますし、もっとやりたい人は、次の問題、次の問題……と開いていって、より深く学習できる状況にあったかなと思います。
問題は60問ほど用意してますので、やる気があれば、もうどこまでも進められるようになっています。
―― 教材で学べる範囲を全てやれば、Pythonをほぼマスターできますよね?
田那辺氏 はい、おっしゃる通りです。外部のライブラリを使わない範囲で、一通りの文法を学習できます。
―― ありがとうございました。
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