5G標準対応のArm版Windows 10搭載2in1 PC「HP Elite Folio」を使って分かったこと:Armだからできるデザインと機能(3/3 ページ)
日本HPの「HP Elite Folio」は、5Gに標準対応しながら20時間以上のバッテリー駆動時間を備えつつ、ヴィーガンレザーのカバーで覆われた異色の1台だ。気になる実機をチェックした。
気になる性能はどうだ?
Snapdragon搭載ということで気になるのがパフォーマンスだ。Core i5-8250U(4コア8スレッド)を装備したモバイルPC(ThinkPad T480s/メモリ20GB/SATA SSD 1TB)と比べたが、PCMark 10 Applications(Word、Excel、PowerPoint)では約70%のスコアだった。ブラウザベースのWebXPRT 3(Edgeブラウザ)では比較対象の約75%のスコアとなった。
3年前のPCにも及ばないスコアではあるが、体感的な使用感は数字ほど見劣らない印象だ。スリープ(モダンスタンバイ)からの復帰は速く、OSネイティブの基本操作もキビキビとした動作で、こうした部分だけならモダンスタンバイに対応した最新PCとあまり変わらない。エミュレーションでの動作となるアプリもスムーズに使えた。試用中に明らかに遅いと感じたのは、PCMark 10のインストール時くらいで、意識しなければ特に遅延を感じるようなこともなかった。
Armネイティブのソフトウェアとして、アドビのPhotoshop CCを試した。評価機はメモリやストレージが少ないこともあって、編集する枚数が増えていくと明らかに遅延するが、1〜2枚のRAWデータを編集するだけならば最新PCと変わらないレスポンスで、ちょっとした色調の補正、トリミング、リサイズ程度の作業ならば快適に使える印象だ。
なお、Arm版のZoomも試用してみたが、現状使えるのは基本的な機能のみにとどまる。操作感自体はサクサクであったが、バーチャル背景も利用できないのは残念なところで、今後の機能強化に期待したいところだ。
最大輝度で実動約12時間動作 何よりファンレスで発熱も低い
バッテリーの駆動時間は、Wi-Fi 6で常時接続、最大輝度でYouTubeのフルHD動画を連続再生するという条件で測定してみたところ、残量がなくなるまで約12時間動作していた。公称値は約21.1時間だが、厳しい条件であることを考えると十分だろう。ただ、残量が0%になってからはACアダプターを接続していてもバッテリーがある程度(数%)充電できていないと電源を入れることができなかった。スマートフォンやタブレットではよく見る光景で、対策はいくらでもあるので弱点というわけではないが、通常のPCとは少し違う扱いが必要なようだ。
使っていて一番感じたのが、ファンレスでもボディーがほとんど発熱せず、常時快適に使い続けることができたことだ。この点は、ヴィーガンレザー搭載のデザインと合わせて、Snapdragon 8cx Gen2 5G Platformを搭載している最大のメリットではないだろうか。
Snapdragon 8cx Gen2 5G Platformの特徴を生かし切った意欲作
ArmベースのCPUを搭載したPCではスマートフォンライクなスリープ(モダンスタンバイ)からの復帰の速さが強調されるが、それだけならば既にIntel系CPUとモダンスタンバイでも実現されている体験と大差ない。
本製品はそれにとどまらず、放熱設計が容易なことからくるこれまでにない新鮮なデザイン、タブレットとしても使える独自の可変スタイル、ファンレスでも高温にならない扱いやすさ。5Gの高速通信対応、充電を含め多用途に使えるUSB Type-C、美しいアスペクト比3:2の画面なども見逃せない。
Snapdragon 8cx Gen2 5G Platformを生かした独自の付加価値を上乗せして、完成度の高いビジネスモバイルPCに仕上げているところが素晴らしい。直販価格はキャンペーンモデル(3E5U0PA)で税込み18万4580円だ。メモリ16GB、ストレージが512GBになる上位モデルは19万7780円(キャンペーン価格、3E8V3PA)で用意されている。
普段利用しているアプリの動作に問題がなければ、ネットワーク環境を気にせずどこでも使えるモバイルPCとしてぜひ検討の選択肢に加えてほしい。
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