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96MBのL3キャッシュは効果あり? AMD 3D V-Cache搭載の「Ryzen 7 5800X3D」の実力をチェック!(4/4 ページ)

AMDのデスクトップPC向けCPU「Ryzen 7 5800X3D」は、独自の「3D V-Cache Technology」を活用してL3キャッシュを従来比で64MB増量したことが特徴だ。条件によっては上位の「Ryzen 9 5900X」を上回るパフォーマンスを発揮するという同CPUの実力を、実際にテストを通してチェックしていこう。

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RAW画像書き出し時間を比較

 性能テストの最後は、「Adobe Lightroom Classic」を用いて100枚のRAWファイル(非圧縮/未加工ファイル)の現像に掛かる時間を比べてみよう。

 今回の検証では、ニコン製デジタルカメラ「Nikon Z 7II」で撮影したRAWファイル(8256×5504ピクセル)を「長辺1920ピクセル/720DPI」に縮小してJPEGファイルとして書き出す設定とした。掛かった時間は以下の通りだ。

  • Ryzen 7 5800X3D:39秒7
  • Core i7-12700K:38秒01

 差は約1秒だった。単純なコア/スレッドの数や最大クロックを考えるとCore i7-12700Kとの差は大きくなると思ったが、それほどでもなかった。むしろ、Eコアという追加コア(スレッド)を備えないRyzen 7 5800X3Dは“健闘”しているともいえる。

 CINEBENCH R23やBlender Benchmarkの結果を見れば分かる通り、CPUを使ったレンダリングではCore i7-12700Kの優位は大きい。CPUを積極的に使う処理(HDR加工や高解像度データの生成など)ではCore i7-12700Kの方が優位に立つかもしれないが、今回のテスト結果を見れば分かる通り、Ryzen 7 5800X3Dも十分に高速だ。

 レンズ交換式デジタルカメラにハマって「RAW現像が高速なハイスペックPCが欲しい」というのであれば、CPUとしてRyzen 7 5800X3Dは有力な選択肢の1つとなりうる。

RAW現像
Photoshop Lightroom Classicで100枚のRAWファイルの現像に掛かった時間。今までのテストのグラフと異なり、短いほど高速なので注意したい

ワットパフォーマンスならRyzen 7 5800X3D!

 最後に、各種ベンチマークテストを実行している時におけるRyzen 7 5800X3DとCore i7-12700Kの消費電力を計測した結果も共有したいと思う。

 確認したのは、OSの起動後に常駐アプリなどの読み込みが終わった「アイドル時」、RAWファイルの現像を行っている際の「RAW現像時」、そしてFF15ベンチマークを4K/高画質で実行している際の「FF15ベンチマーク時」における最大消費電力。筆者が自宅で運用しているUPS(無停電電源装置)のログから数値を取った。

 結果は以下の通りである。

  • アイドル時
    • Ryzen 7 5800X3D:67W
    • Core i7-12700K:76W
  • RAW現像時
    • Ryzen 7 5800X3D:229W
    • Core i7-12700K:243W
  • FF15ベンチマーク時
    • Ryzen 7 5800X3D:423W
    • Core i7-12700K:457W

 Ryzen 7 5800X3DがCore i7-12700Kに比べて圧倒的に省電力というわけではないが、それでも高負荷時はRyzen 7 5800X3Dのシステムは消費電力が30W程度少ない。特にゲーミングでは両CPUのパフォーマンスに大差はないため、「省エネゲーミングCPU」としてのRyzen 7 5800X3Dは有益な存在であるともいえる。

消費電力
消費電力を比較

3D V-Cacheの“伸びしろ”を感じた高いゲーミング性能

 Ryzen 9 5900Xや第12世代Coreプロセッサの上位モデルと比べると、Ryzen 7 5800X3Dの演算能力“そのもの”は若干劣る。CINEBENCH R23やBlender Benchmarkの結果を見れば、そのことが良く分かる。

 しかし、PCMark 10や3Dグラフィックスのテスト結果を見ると、Ryzen 7 5800X3Dが理論的な演算能力で勝るはずのCore i7-12700Kと並ぶか、場合によってはそれを上回るパフォーマンスを発揮している。これはひとえに3D V-Cacheによって96MBものL3キャッシュを手に入れた結果である。さまざまなCPU命令を駆使するようなアプリでこそ、3D V-Cacheの威力は大きいといえる。

 「さまざまなCPU命令を駆使するようなアプリ」の代表例がゲームアプリだが、Ryzen 7 5800X3DはゲーミングPC用のCPUとしてある意味でピッタリな選択肢といえる。Ryzen 5000シリーズに対応するマザーボードなら、UEFIを更新した上で“ポン付け”できるので、Ryzen 3000シリーズを使っている人のアップグレードパスの1つとしてもお勧めだ。

 何のためにPCを使うか――目的がハッキリとしているのなら、Ryzen 7 5800X3Dは最良のCPUの1つとなりそうである。

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