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周辺機器に付属のケーブルやポーチが低品質になる裏事情 原価はなんとゼロ円?牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

マウスだと持ち歩き用のポーチ、周辺機器だとケーブルといった具合に、製品を買うとついてくる付属品は、メーカーにとっては原価がゼロ円であることが多い。多少なりともコストがかかっていてもおかしくないはずなのに、なぜそうなるのだろうか。

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 モバイルマウスを購入すると、マウスを収納して持ち歩くためのポーチが付いてくることが多い。大抵はないよりマシといったレベルの品質で、買ってから使ったことがない人も少なくないだろう。単体販売など到底望めないクオリティーだ。

 せっかくこうしたオマケを付けるのであれば、価格を多少上げてももっと品質を高くしてほしいとか、逆になくして値段を下げてほしいと思う人もいるかもしれないが、実際にそうなることはない。

 こうした付属品は、マウスに限らず、さまざまな周辺機器でみられるが、はかったように低品質だ。それはどのような理由によるものだろうか。

マウスのポーチは付属品というよりも「販促品」

 日本国内で販売されるマウスのほとんどは海外で生産されている。デザインを日本で起こして生産を委託している場合もあるが、大抵は完成品を海外で買い付け、自社製品であるかのようにパッケージを付けて売っているケースだ。

 ところでこうした製品は、部材ごとにバラバラに仕入れて、日本で1つの製品として仕立て上げる場合もあれば、パッケージの版下も海外に送り、完全な状態で仕入れる場合もある。後者の場合は、海外の工場から消費者に届いて開封されるまで、メーカーはその中身を一度もチェックしないことも少なくない。

 こうした状況下で、マウスのポーチのような付属品は、海外のマウス製造業者が用意しているわけだが、これらは実は「原価ゼロ円」のオマケであることが多い。これは海外の生産業者を選定するにあたり、業者がポーチを付けることを条件として提示し、そのまま通ったことによるものだ。

 こうした海外業者が日本のメーカーに見積もりを出す場合、他社と条件が拮抗することがよくある。価格的には似たり寄ったりで、またこれ以上下げられないこともよくある。こうした場合にある業者は相手の業者に勝つために、自社のラインならば安価に製造できるポーチを無料で付けますといった具合に、見積もりに付加価値を付けるわけだ。

 一般的に消費者は、実際にはそれが不要なモノであっても、付属品が多ければよりお得と見なす傾向がある。これは本体の機能についても同様で、たとえ使わない機能であっても、それが備わっているだけでつぶしがきく製品として、選ばれる確率は高くなる。これは販売店が定番製品を選定するときも同様だ。なぜならその方が客に勧めやすいからだ。

 マウスのポーチはその典型例で、たとえ素材がペラペラで耐衝撃性が皆無な品でも、製品が二者択一の状況下では、付属する方が消費者に選ばれやすい。「やっぱりいらなかった」と分かるのは、買って使った後のことだ。いうなれば販促品のようなものである。

 メーカーもこうした事情を熟知しているので、見積もりが拮抗していれば、こうしたオマケが付いた業者の見積もりを採用し、そして敗北した他社は次回それに負けない付加価値を用意して見積に望むことになる。メーカーはというと、このように業者に競り合わせ、価格を下げつつ付加価値を上げていくだけでよい。

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