「デジタル時代に新たな花の文化を開かせる」――東信氏AMKKの滑らかなDX化と新たな挑戦:デジタルで新しい「花」の姿を表現し続けたフラワーアーティスト(3/4 ページ)
Apple製品を使い、これまでにない表現を続けるフラワーアーティストの東信(あずま まこと)氏。林信行氏が、花とデジタルツールとの融合や、制作にかける思いを聞いた。
テクノロジーがアートにインスピレーションを与える
東氏や椎木氏が主に使うのはアドビの「Photoshop」「Illustrator」「Premiere」といった、クリエイター定番のソフトだ。
「後はRAW写真の現像用にフェーズワンの『Capture One』です。最近、3DソフトもということでAutodeskの『Maya』を使えるチームも作りつつあります」(椎木氏)
これらを、iPad ProとM1 Maxを搭載したMacBook Proで使うというのだが、M1 Maxの性能を実感することはあるのだろうか。
「生け花が咲いて枯れるまでをタイムラプス撮影する『Drop Time』という作品シリーズがあります。15秒に1回シャッターを切って、2週間撮り続けた7万枚の写真を使っています」(椎木氏)
よく聞けば、その7万枚の写真は全て350dpiのRAWデータで、1枚の写真の容量は200MB以上に上るという。
「以前なら現像と映像の書き出しに1週間ほどかかっていたものが、M1 Maxだと結構、ものすごく速く処理ができるようになった」という。
だからこそ、これまでの同じシリーズは3〜4万枚の写真で製作していたが、今回は7万枚で製作した。
椎木氏は続ける。「写真は枚数が多ければ多いほど、花の動きはきれいになる。さらに性能が上がったら、10万枚の写真で製作することもできると思います」と語る。
AMKKでは、このMacBook Proに最新の27型ディスプレイ「Studio Display」をつないで製作を行っている。
「タッパの大きい作品を作るとき、そのままのMacBook Proのディスプレイではどうしても表示が小さくなってしまいます。そういう作品を手掛けるときは、やはり大画面でないとダメですね」(東氏)
オフィスでMacBook Pro、iPad Pro、iPhoneを駆使して制作をする東氏。iPad Proを使うことが一番多いようだが、大型の作品のディテールにはApple Studio Displayを活用している
現在、人物と同じくらいの大きさの作品を手掛けているが、MacBook Proの画面サイズでは、花のディテールの部分の確認ができないと、Studio Displayで確認しながら作業を進めているそうだ。
東氏のオフィスは、会計事務以外は全員がApple製品を使っているという。
「やはり、かっこいいですよね」――最初はカタチから入ったが、お店が無機質な感じであることや、作品で非常に多くの色を使うことから、制服を始めインテリアやパソコンもシンプルモダンなものを選んでいるというのも理由の1つだ。
最近では機動性が高いからと、iPhoneで映像や写真の撮影をiPhoneで行うことも多い。先日は北海道で−15度の環境で20時間くらいかけて氷の花を作ったが、そこにもiPhoneを持っていったという。「最近のiPhoneは寒い環境でもバッテリーの持ちが良い」と、その時のことを振り返る。
かと言えば、作品作りに使われていたのと同じiPhoneが、花屋の事業で決済端末として使われていることもあるという。
このように、Appleのさまざまな機器を使いこなして製作から事業全般に活用する東氏だが、最近はMacが高性能化したことで、新たなチャレンジへの意欲が芽生えてきたという。
「来月から3Dを使えるスタッフが中国からやってきます」と東氏。「これまで平面で作っていたものが、これからは段々と立体にしたくなってくる。メタバースとかの中でも動かしたい。これからWeb3に移行するにあたって、僕らもリアルな花以外に、デジタルでブーケを作って送り合うみたいなことを始めています。その延長線上で立体表現などの取り組みも始めているのです」と述べる。
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