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「Arm版Windows 11」を試してみたい! ならMicrosoftの「Windows開発キット 2023」はどう?(前編)(1/3 ページ)

Microsoftが10月24日(米国太平洋時間)にリリースした「Windows 開発キット 2023」は、Armアーキテクチャ向けのWindows 11に対応するPCとしては比較的手頃な価格である。Windowsにおける「非x86CPU」の対応を振り返りつつ、この開発キットがどのようなものなのかチェックしていこう。

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 10月24日(米国太平洋時間)、MicrosoftがProject Volterraこと「Windows 開発キット 2023」を発売した。日本でもおける価格は税込み9万9880円と、当時の為替レートを考えると比較的頑張った価格だったように思う。

 ArmアーキテクチャのCPU(SoC)を搭載しているPCといえば、ここ2年ほどはApple Silicon(M1/M2チップファミリー)を搭載するMacを連想する人も多いと思う。一方で、Windows PCでもArm CPUを搭載しているものがちらほら登場しているものの、旧来のIntelアーキテクチャ(x86/x64)搭載モデルが主流であり続けている。

 Arm CPUで動かすWindows 11はどのようなものなのか――どうしても気になる筆者は、発売直後にWindows 開発キット 2023を発注し、無事手元に届いた。2回に分けてその“実像”をレポートしていこうと思う。

Webサイト
思ったより手頃だったせいか、Windows 開発キット 2023は発売直後に品切れとなった。しかし12月12日現在は在庫があり、すぐに買えるようになっている
実機
筆者の手元に届いた「Windows 開発キット 2023」
5月に発表された当時のトレーラー

「Windows×Arm」の歴史を少し振り返ってみよう

 「WindowsといえばIntelアーキテクチャのCPUで動かすもの」というイメージがあるかもしれないが、その歴史を振り返ると、他のCPUアーキテクチャでの稼働は過去に何度か試みられている。先に少し振り返ってみよう。

 現在のWindowsのルーツは、1993年(日本では1994年)に初めての製品版がリリースされた「Windows NT」に求めることができる。その初リリースとなる「バージョン3.1」では、Intelアーキテクチャの32bit CPU(IA-32)に加えて、DEC(現在のHP)の「Alpha(アルファ)アーキテクチャ」、MIPSの「MIPSアーキテクチャ」のCPUでの動作をサポートしたことが大きな話題となった。

 その後登場した「バージョン3.51」(1995年)と、そしてWindows 95風のUI(ユーザーインタフェース)を取り入れた「バージョン4.0」(1996年)では、IA-32、Alpha、MIPSに加えてIBMの「PowerPCアーキテクチャ」のCPUもサポートするようになった。しかし、バージョン4.0の後継となる「Windows 2000(Windows NT 5.1)」(2000年)ではIA-32以外のアーキテクチャのサポートが打ち切られることになった(※1)。

(※1)Windows 2000 Server、その後継の「Windows Server 2003」と「Windows XP」には、IntelとHPが共同開発した「IA-64」(現在のx64/x86-64アーキテクチャとは異なる)に対応するエディションもあった

Windows 2000
Windows NTではバージョン4.0までIA-32以外のCPUアーキテクチャをサポートしていたが、Windows 2000(当初は「Windows NT 5.1」としてリリース予定だった)以降のクライアント向けエディションでは、IA-32以外のアーキテクチャを原則としてサポートしなくなった(ただし、その後のWindows XP以降はIA-32を64bit対応に拡張した「x64/x86-64アーキテクチャ」をサポートする「64bit版」も登場するようになる)

 少し話がそれそうになったが、WindowsにおけるArmアーキテクチャのサポートは、2012年に発売された「Windows RT」にルーツを求めることができる。

 Windows RTは「Windows 8」と同時に登場したOSで、UIも同一である……のだが、以下のポイントが異なる。

  • ArmアーキテクチャのCPUでのみ動作する(≒Windows 8とは別のOS)
  • プリインストール版のみ用意されている(=OSの単体販売はない)
  • 専用の「Microsoft Office」が付属する
  • x86(IA-32)/x64アプリとの互換性がない(=既存のアプリを動かせない)

 上記のうち、x86/x64アプリとの互換性がないというのは実用面において“致命的”だった。当時を振り返ると、Windowsが高いシェアを持つ根源の1つである互換性を捨てたことはかなりショッキングな出来事だったように思う。

 結局、Windows RTは“泣かず飛ばず”となり、Microsoftは2013年4〜6期決算で9億ドルの評価損を出さざるを得なくなった。

Windows RTプリインストール機
Windows RTは、Microsoftが自らリリースした「Surface RT」(左)の他、NECパーソナルコンピューター(NECPC)の「LaVie Y」(右)を始めとして幾つかのメーカーからリリースされた。SoCはいずれもNVIDIA製の「Tegra 3」だった
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