iPhone 15 Proでようやく対応の「Wi-Fi 6E」って何? 「Wi-Fi 6」と何が違う?:改めておさらい(3/3 ページ)
ハイエンドのAndroidスマートフォンから遅れること約2〜3年、iPhoneにもようやく「Wi-Fi 6E」の波が来た。「Wi-Fi 6」と何が違うのか、改めておさらいしつつ、その長短を確かめていこう。【訂正】
6GHz帯を利用するがゆえのデメリットもある
2.4GHz帯や5GHz帯に加えて6GHz帯も使えるWi-Fi 6E。6GHz帯の利用には少なからずメリットがあることは事実だが、無視できないデメリットもそれなりにある。その1つが、メリットでもある6GHz帯を使うという事実そのものだ。
一般に、電波は周波数が高くなるほど「距離減衰」が大きくなり、「直進性」が増す。端的にいえば遠くに届きにくくなり、障害物や遮蔽物に弱くなることである。
帯域が狭く、他用途との干渉が非常に多い2.4GHz帯は、他の帯域と比べるとスループットこそ遅くなりがちだ。しかし、周波数が低いため比較的遠くまで電波が届き、壁を始めとする障害物にも強い。それと比べると、5GHz帯は通信できる範囲が狭く、障害物にも弱くなる。理屈の上では、さらに周波数の高い6GHz帯は、より通信範囲が狭く、障害物にも弱いといえなくもない。
ただ、複数の無線LAN機器メーカーの担当者に話を聞いてみると「2.4GHz帯と5GHz帯の差」と比べて、「5GHz帯と6GHz帯の差」は大きくないという。エリアを検討する際は、基本的には5GHz帯と同じように考えてよいと口をそろえる。かなり保守的に考えた場合でも、5GHz帯のルーターからほんの少しだけ狭くなる程度で検討すればいいそうだ。
実際にWi-Fi 6Eルーターを運用してみると、6GHz帯の通信が厳しい場所は、おおむね5GHz帯を使っても通信が厳しい。確かに差は出るとしても軽微という実感はある。
![使ってみる](https://image.itmedia.co.jp/pcuser/articles/2309/13/si7101-6E-10.jpg)
バッファローのWi-Fi 6E対応ルーター「WNR-5400XE6」を1台で運用する限り、5GHz帯と6GHz帯で電波の届きに有意な差は感じられない。ただ、電波をつかむかどうかの“ギリギリ”のラインに多少の差はあるので気を付けたい
「対応機器」が必要なのもデメリット
当然だが、6GHz帯で通信するには、ルーターはもちろん、そこにつながるクライアント機器もWi-Fi 6E対応でなくてはならない。
スマートフォンやPCについては、2021年以降に出たモデルなら、ソフトウェアの更新によってWi-Fi 6Eに対応できるかもしれない(参考記事)。「海外モデルはWi-Fi 6E対応なのに日本ではWi-Fi 6E非対応」というクライアント機器を使っている場合は、ソフトウェアの更新がないかどうか確認してみるといいだろう。
![アップデートで対応](https://image.itmedia.co.jp/pcuser/articles/2309/13/si7101-6E-11.jpg)
Googleのスマートフォン「Pixel 7」の日本向けモデルは当初、6GHz帯での無線LAN通信に対応していなかった。しかし、2022年12月に配信されたソフトウェア更新を適用すると6GHz帯での無線LAN通信に対応する(左がソフトウェア更新適用前の認証情報、右が適用後の認証情報)
一方、Wi-Fiルーターは、買い換えないと6GHz帯への通信に対応できない。今回のiPhone 15 Pro/15 Pro Maxも好例だが、スマホやPCは買い換えのタイミングでWi-Fi 6Eに対応することも珍しくない。しかし、Wi-Fiルーターはそうそう頻繁に買い換えるものではなく、下手をすると6GHz帯対応が“最後”に回される可能性も否定できない。
ただ、特に入居者の多い都市部の集合住宅だと、6GHz帯で通信するとスループットが明らかに改善する可能性が高い。Wi-Fi 6E対応のデバイスが1台でもあるなら(あるいは導入を検討しているなら)、それに合わせてルーターもWi-Fi 6E対応に買い換えることも検討してみてほしい。
なお、Wi-Fi 6E対応であることを示すWi-Fi Allianceの「Wi-Fi CERTIFIED 6」ロゴは、Wi-Fi 6とWi-Fi 6Eで“共通”となっている。このロゴを見ただけでは、Wi-Fi 6E対応かどうか判別できないのだ。
Wi-Fi 6E対応製品を探すには、パッケージにある「Wi-Fi 6E対応」「6GHz帯対応」といった補足説明も合わせて確認する必要がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「iPhone 15」「iPhone 15 Plus」はUSB-C、A16 Bionic、4800万画素カメラ採用 超広帯域無線の新機能も
AppleがiPhoneのメインストリームモデルを発表した。従来のLightning端子からUSB Type-Cに置き換わったことが最大の特徴だが、A16 Bionicチップを搭載したことによる新機能にも注目が集まる。【更新】「iPhone 15 Pro/15 Pro Max」発表 USB-C採用、チタニウム素材で軽量小型化、アクションボタン搭載
AppleがProシリーズの新モデル「iPhone 15 Pro」「iPhone 15 Pro Max」を発表した。「Pixel 7」「Pixel 7 Pro」がWi-Fi 6Eに対応 PCでの対応は進むのか?
Googleのスマートフォン「Pixel 7」「Pixel 7 Pro」が12月の月例更新でWi-Fi 6Eに対応したようだ。メーカーのサポート情報では明記されていないが本当なのだろうか。Pixel 7で確認してみよう。「Wi-Fi 6E」対応ルーターを手に入れた……のに本領を発揮できなかった件
9月2日に6GHz帯の電波を無線LANで利用できるようになったのを受けて、バッファローがWi-Fi 6E対応ルーターの出荷を開始している。一足早く体験する機会を得たのだが、ちょっと困ったことが発生したので読者の皆さんに共有しようと思う。ついに始まった「Wi-Fi 6E」 既存の対応機器で有効化するのは難しい? 総務省に確認して分かったこと
日本でも解禁された「Wi-Fi 6E」だが、解禁日(9月2日)より前に登場した「Wi-Fi 6Eレディ」な機器においてWi-Fi 6Eを利用するには超えなければならない“ハードル”がある。総務省への確認を踏まえて、かいつまんで解説していく。【更新】