「現場のデジタル化はまだこれから」 MetaMoJiが目指す日本人のための、日本語のための、日本文化のための会社とは:IT産業のトレンドリーダーに聞く!(1/3 ページ)
コロナの5類感染症変更以降も、経済状況や社会情勢の激変は続いている。継続する円安に伴う物価の上昇が続く中で、IT企業はどのような手を打っていくのだろうか。大河原克行氏によるインタビュー連載のMetaMoji 後編をお届けする。
コロナウイルスの5類感染症変更以降も世界情勢の不安定化、製品供給網の寸断や物流費の高騰、そして急速に進む円安と業界を取り巻く環境は刻一刻と変化している。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。各社の責任者に話を聞いた。前編の記事はこちら。
MetaMoJiの特徴は、デジタルを活用して「現場」の生産性や効率性を高めることに徹底してこだわっている点にある。実際、オフィスのデジタル化は過去40年間に渡って推進されてきたが、現場でのデジタル化がフォーカスされてきたのは、ここ10年間くらいのことだ。
その中において、MetaMoJiは現場のデジタル化をリードしてきた企業の1社だといえる。だが、MetaMoJiの浮川和宣社長は、「現場のデジタル化はまだまだである」と指摘する。そして、「MetaMoJiを大きくすることは考えていない。日本人のための、日本語のための、日本の文化のために貢献できる会社になりたい」とも語る。
前編に続く後編では、長年IT産業を牽引しつづける浮川和宣社長と浮川初子専務に、現場のデジタル化の現状や課題を示してもらう一方、IT産業の現状を俯瞰(ふかん)してもらった。そして、MetaMoJiの目指す姿についても聞いた。
【前編】「100年後の人にあって良かったと思われるもの」を目指して 浮川社長と浮川専務のMetaMoJiが進める現場のDX
建設/TV制作/医療の現場課題をMetaMoJiのデジタルツールで解決
―― MetaMoJiの「eYACHO」は建設現場で活用されるツールとして高い評価を得ていますが、さまざまな業種や業務に適用できる「GEMBA Note」は、どんなところで活用されていますか。
浮川専務 MetaMoJiの基本的な開発方針はコアとなるものを作り、それができるだけ汎用(はんよう)化し、いろいろな領域に展開できることを目指しています。eYACHOとGEMBA Noteもコアは一緒で、データが異なったり、使う現場が異なったりしています。
例えば映画の製作現場や放送局でも、GEMBA Noteは利用されています。人気映画である「キングダム」の製作には、佐藤信介監督自らがGEMBA Noteを導入し、初期のアイデアスケッチや、大勢のスタッフを帯同して行うロケハンでの情報共有、刻々と変化する撮影時の台本の変更や記録まで、映画製作の数多くの局面で活用しています。
また、TBSテレビが夕方に放送している報道番組「Nスタ」では、井上貴博アナウンサーがタブレットを机の前に置いていますが、ここでもGEMBA Noteが利用されています。もともとNスタでは、1回の放送でニュース原稿やキューシート、進行表を合わせて5700枚もの紙が使用されており、変更が入るとスタッフがすぐにコピーして、10数カ所の配布先に配って回るということが、放送中何度も繰り返されていたといいいます。
GEMBA Noteを使用することで、こういった作業が減り、正確な情報伝達とリアルタイムでの情報共有が可能になりました。私たちにとっても、生放送中にサーバがダウンしてGEMBA Noteが使えなかったということがあってはいけませんから、毎日が緊張の連続です(笑)。今のところは、1度もトラブルはありません。
また2021年6月から、歯科医院向けデジタルノート「Dental eNote」の提供を開始しています。多くの歯科医院では、紙による大量のサブカルテが保管されていたのですが、これをデジタル化し、さらに撮影した画像データや診断結果なども共有し、歯科医と歯科技工士、衛生士といった治療室やバックヤード、受付にいる全ての関係者がリアルタイムに情報を共有できるようになりました。
2020年9月から先行提供していた体験版を含めて、3年間で300以上の医院に導入されており、歯科医同士の口コミで広がり始めているところです。業界の調査によると、サブカルテのデジタル化を検討する歯科医からの認知度はNo.1になっています。
さらにGEMBA Noteをベースに、Film Solutionsが製品化している映像制作現場向けデジタルノートアプリ「Creators Note」では、脚本やスケジュール、香盤表など、映像制作に必要な資料作りをサポートします。外部のテキストエディタで作成した脚本データをアプリ内にペーストすると、縦書きの脚本レイアウトで表示したり、該当シーンの脚本ページにジャンプしたり、簡単に詳細情報を追記することが可能になっています。
GEMBA Noteの機能を使って、画像や動画を取り込んだり、その上から手書きメモやテキストを書き込んだりできますから、効率的に情報整理ができます。
教育現場の先生をデジタル化で支援したい
―― 教育分野向けには「MetaMoJi ClassRoom」を提供していますね。これもMetaMoJiにとっては大きな事業となっています。教育市場ではどんな役割を果たすことを狙っていますか。
浮川社長 今は、子供たちが1人1台のデバイス環境で学習できる環境になっています。また通信機能により、さらに効果的な学習ができるようになっています。しかし、なかなかフォーカスされていないのが、先生の負担が増えているという点です。
私は1時間の授業をより効率的に行い、生徒に対する学習効果を最大するための支援をし、教育の水準が上がるような仕掛けをしたいと考えました。そのためには、先生が使いやすいツールを提供することが大切です。
この環境に、MetaMoJiが持つリアルタイム情報共有アプリである「MetaMoJi Share」の技術を活用すれば、現場の先生を支援できるのではないかと思いました。黒板に書いた内容を書き写すだけで授業が終わるのではなく、先生が伝えたいことを伝えられる授業を支援する、先生のためのツールを目指しています。
かつてはPC教室があって、そこに移動してPCを使っていましたが、今は生徒が1人1台のデバイスを持ち、授業を受けています。生徒がログインすることに手間取ったり、グループ学習や個別学習のたびにアプリを切り替えたりといったことがMetaMoJi ClassRoomではなくなりました。さらにネットワークが細い環境でも快適に動作したり、生徒の状況をリアルタイムに把握したり、在宅授業や遠隔授業にも対応できるようにしています。
私自身、教育現場を支援したいということは、ずっと考えて実行してきました。MetaMoJiも、教育現場を支援することができる会社です。教育現場を支援するという方向性を持った経営者がMetaMoJiにはいて、それを実現する技術を持ったエンジニアがMetaMoJiには在籍しています。だからこそ、MetaMoJiは教育分野に継続的に貢献できると自負しています。
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