“2種類のPコア”でパワフルさと高効率を両立 AMDがモバイルAPU「Ryzen 5 7545U」を投入
AMDが、モバイルPC向けAPU「Ryzen 5 7545U」を発表した。同社としては初めて、2種類のCPUコアを搭載したことが特徴……なのだが、他社とは異なり“ほぼ同じ性能”のCPUコアを混載していることが差別化ポイントとなっている。
AMDは11月2日(米国太平洋夏時間)、薄型モバイルPC向けAPU(GPU統合型CPU)の新製品「Ryzen 5 7545U」を発表した。搭載製品はPCメーカーを通して順次発売される予定だ。
Ryzen 5 7545Uの概要
Ryzen 5 7545Uは、Ryzen 7040シリーズのラインアップのうち、「Ryzen 5 7540U」を事実上置き換えるモデルとして登場する。主なスペックは以下の通りだ。
- CPUコア:6基12スレッド/3.2GHz〜4.9GHz
- L2/L3キャッシュ:合計22MB
- GPUコア:Radeon 740M
- Ryzen AI:非搭載
スペックだけ見ると、Ryzen 5 7540Uと何ら変わりはない。しかし、型番が異なるということは、どこかに“異なる”ポイントがある。
違いはどこにあるのか――それはCPUコアの構成にある。
Ryzen 5 7540UのCPUコアは、6基全てが「Zen 4アーキテクチャ」で構成されている。それに対して、Ryzen 5 7545UのCPUコアは、2基がZen 4アーキテクチャ、4基が「Zen 4cアーキテクチャ」のものとなっている。
Zen 4cアーキテクチャは、Zen 4アーキテクチャをベースとして、主にCCX(Core Complex)におけるCPUコアの最大数を削減(4コア→2コア)することでダイの面積を約35%削減したものとなる。実装面積が小さくなる分、CPUコアの増減(=スケーラビリティー)に対応しやすく、CCX自体の消費電力も抑えられるという。
上記以外の面では、スペック上の差異はないという(※1)。
(※1)EPYC 8004シリーズに搭載されているZen 4cアーキテクチャのCPUコアは、他の第4世代EPYCプロセッサにおけるZen 4アーキテクチャのCPUコアと比べるとL3キャッシュの最大容量が半減している(1コア当たり4MB→2MB)。しかし、Ryzen 7040シリーズにおけるZen 4cアーキテクチャの説明では、そのことへの言及がない
新しく登場するRyzen 5 7545Uは、Zen 4とZen 4cのCPUコアが初めて“混載”されるAPUとなる。AMDはこれを「AMD Ryzen High Performance Core Technologies」と呼んでいる。競合のIntelが「高性能コア(Pコア)」と「高効率コア(Eコア)」の2種類のCPUコアを混載しているのに対して、AMDは基本性能が変わらない2種類のPコアを搭載していることが強みである。
先述の通り、Zen 4アーキテクチャのコア(Zen 4コア)とZen 4cアーキテクチャのコア(Zen 4cコア)では基本性能に大きな差はないが、実装面積を小さくした分、Zen 4cコアは消費電力が小さくなっている。
その前提の上で、Zen 4コアには「シングルスレッド性能」と「20W超のTDP(熱消費電力)におけるマルチスレッド性能」を重視するチューニングを施し、Zen 4cコアには「マルチスレッド処理時の効率」を重視するチューニングを施したという。
その結果、Ryzen 5 7545Uは、Ryzen 5 7540Uと比べて低TDP時の演算能力は改善したそうだ。一方で、高TDP時の性能はRyzen 5 7540Uの方が上回る。平均すると体感性能はほぼ同じになるという。
Ryzen 5 7540UとRyzen 5 7545Uのパフォーマンス比較(CINEBENCH R23/マルチコア)。低消費電力帯ではRyzen 5 7545U、高消費電力帯ではRyzen 5 7540Uの方がパフォーマンスを発揮しているが、平均を取るとほぼ同じ性能特性となるそうだ
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 薄型モバイル向け「Ryzen 7040U」登場 Zen 4+RDNA 3にRyzen AI(一部)で「Apple M2やCore i7-1360Pよりも高速」
AMDのモバイル向けAPU「Ryzen 7040シリーズ」に、メインストリームの「Uプロセッサ」が登場する。AIプロセッサは上位製品にのみ搭載されるが、CPUコアやGPUコアのパフォーマンスアップは、全ての製品に恩恵があるようだ。 - AI処理パフォーマンスを大きく改善 4nmプロセスのモバイルAPU「Ryzen 7040シリーズ」登場 搭載製品は3月以降に登場
AMDの最新CPUアーキテクチャ「Zen 4」が、いよいよモバイル向けに登場する。メインストリームとなるRyzen 7040シリーズでは、CPUコアが4nmプロセスとなり省電力性能が高まった他、最新の「RDNA 3アーキテクチャ」のGPUや独立したAIアクセラレーターも統合していることも特徴だ。 - AMDがモバイル向けプロセッサの「モデル名」のルールを改定 2023年以降の新製品から適用
AMDが、2023年以降に新規出荷されるモバイル向けプロセッサ(APU)からモデル名の付与ルールを変更する。同一年内に異なる複数のアーキテクチャの製品を投入することから、位置付けを含めて区別をしやすくするための措置で、少なくとも3年間は適用されるようである。 - Zen 4は「AVX-512」対応 Zen 5は2024年にも登場へ――AMDがCPU/GPUの最新ロードマップを披露
AMDが投資アナリスト向けの事業説明会を開催した。その中で、CPUやGPUの最新ロードマップが披露されたので、コンシューマー(個人向け)製品に関係のある内容をピックアップして紹介しよう。 - AI処理パフォーマンスを大きく改善 4nmプロセスのモバイルAPU「Ryzen 7040シリーズ」登場 搭載製品は3月以降に登場
AMDの最新CPUアーキテクチャ「Zen 4」が、いよいよモバイル向けに登場する。メインストリームとなるRyzen 7040シリーズでは、CPUコアが4nmプロセスとなり省電力性能が高まった他、最新の「RDNA 3アーキテクチャ」のGPUや独立したAIアクセラレーターも統合していることも特徴だ。