AppleはAIのOS統合をどのようにデザインしたのか? 林信行の「Apple Intelligence」考:WWDC24(1/5 ページ)
注目が集まっていたAppleの生成AIに対する取り組み。ついにWWDC24でその全貌が明らかになった。林信行氏が読み解く。
昨今の生成AIの進化は著しく、もはやスマートフォンやPCに載っているOSにAIを統合することは、これからの必然といえる。実際、既にGoogleやMicrosoftは先行して取り組んでいる。後れを取るAppleが、WWDC24でどのようにAIをOSに統合するのか注目が集まっていた。
今回は基調講演の後、初の試みとして米国のインターネットパーソナリティー「iJustine」がAppleの重役2人にApple Intelligenceについてあれこれ聞く「In Conversation with Craig Federighi and John Giannandrea」というプレス向けのセッションが用意された。AppleのAI戦略担当で上級副社長(写真中央)は「可能な限りクラウドを使わなかったり、使うとしてもプライバシー保護的に安全なサーバに必要最小限の情報を送ったりするなど、テクノロジーの活用に対して非常に責任感のあるアプローチが取れたと思う」と語った
より深いOS統合を目指した「Apple Intelligence」
先日発表された「Apple Intelligence」というOS統合型のAIは、さすがデザインの会社と思わせる、熟考が重ねられた優れた設計思想による統合が行われていた。今後、先行していた他社にも大きな影響を与えそうだ。
振り返ると、Appleは音楽プレーヤーでもスマートフォンでも、タブレットでも、“決して参入一番乗りではないが、その分、しっかりと議論を重ね、優れたデザインで形にする”ことで後れを取り戻し、それぞれの領域の先頭に立ってきた。
今回の“AI統合”も、まさにそうしたデザイン力で大きな差を生み出している。先行していた他社のAI統合型OSは、対話型AIが有用になってきたのを受けて、単純にOSやWebブラウザなどのアプリにAIとの対話用ウィンドウをくっつけたような設計のものが主流だ。
これに対してApple Intelligenceは、音声アシスタントのSiri(今後は文字入力で指示することもできるようになる)との連携はもちろん、各アプリで提供している文字や絵の編集機能などに組み込まれるような形で、より深いOSとの統合を計っている。
Apple Intelligenceは、基本的にはユーザーがどんな人物で、どういう状況に置かれていて、どんな補助が必要か、ある程度を理解しているOSに与えられた知性として設計されている。
実際には、例えば文章や画像の認識や生成、アプリが管理している情報を理解するといった細かなAI機能(モデル)を集めた集合体である。しかし、それらの機能をApple IntelligenceというOSの知性を介して利用することで、バラバラの機能である印象を受けないように丁寧にデザインされている。
また、AIでどんなことができるのか、さりげなく分かるように可視化し、利用を促す工夫もある。
だが、それ以上に大きいのが、このAI技術はAppleが長年大事に積み上げてきたプライバシー保護に対する姿勢の信頼の上で成り立ち、それ故に誰もが安心して使える設計になっていることだ。このアドバンテージは大きい。
もっとも、丁寧なデザインや設計のために2024年内は英語のみの対応となった。日本語でこれらの技術が使えるようになるのは2025年以降になってしまうのは少し残念なところかもしれない。
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