米国生まれの「ヨシノパワー」が“固体電池”のポータブル電源に注力する理由(2/5 ページ)
2023年末、ヨシノパワージャパン(Yoshino Power)が“世界初”をうたう固体電池を使ったポータブル電源を発売した。まだ実用化が進んでいない固体電池を使ったポータブル電源は、どのような背景で生まれたのか、同社の桜田徹社長に話を聞いた。
「安全性」「高温での動作」が強みのヨシノパワーのポータブル電源
―― ヨシノパワーの製品、今回はB300 SSTをお借りしましたが、やはりこの電池の技術がヨシノパワーの強みなのでしょうか?YouTubeなどでは、バッテリーセルにドリルで穴を開けても発火しないというような動画を公開されていたと思います。
桜田社長 ヨシノパワーの強みは、一言でいえば電池だと思っています。我々の製品は固体電池を採用することで「爆発しない」「発火しない」という安全性がものすごく高いです。これが、従来のポータブル電源とは究極的に違う点です。
また、固体電池は特性上、高温にも耐えられることもメリットです。ヨシノパワーの製品は仕様上60度までの環境で保管できます。電池単体でいえばもっと暑い場所でも問題ないですが、バッテリーを制御する温度を65度に設定している都合で「60度までは保管しても大丈夫」としています。
60度まで保管できるということは、夏場であっても倉庫の中や自動車のトランクの中に置いておいても大丈夫というわけです。さすがに、夏場の自動車のダッシュボードの上(あるいは近傍)は厳しいですが。
―― 耐えられる温度が高いことで、保管場所の幅が広がるというのはよいですね。
桜田社長 また、固体電池の特性として、4000回充放電を繰り返しても定格容量の80%を確保した状態を維持できるというのも強みです。サイクル数4000回というのは、ポータブル電源としては業界最高水準です。
ヨシノパワー製品で現行最小となる「Yoshino Power B300 SST」。実売価格は8万円弱で、定格容量は6万4875Wh、出力は定格300W(最大600W)というスペックとなる。IP67等級の防塵(じん)/防水性能も有している
デザインにもこだわりを
―― 過去に他社のポータブル電源を試したこともあるのですが、それと比べてもヨシノパワーの製品はデザインがとてもよいと感じました。リビングに置いたとしても違和感がありません。デザイン面にもこだわっているのでしょうか。
桜田社長 私個人としても、デザインに関しては重要視しています。日本法人の代表を打診された際に、実は「デザインがなかったら引き受けたくないな……」と思っていたのです。
しかし、製品を最初に見せてもらった際に、今までのポータブル電源と比べると想像以上に良かった。リビングにも置いておける、女性からのウケもよいだろうと思いました。安心して引き受けられました。
話を聞いてみると、ヨシノパワーのバッテリーはデザインに関して相当に力を入れているそうです。米カリフォルニアに本拠を構える工業デザインチーム「FuseProject(ヒューズプロジェクト)」と一緒にデザインしています。このデザインは、他メーカーと比べても優位に立てる、1つの“強み”だと思っています。
もっと大容量の製品も発売したい
―― 現時点では、ポータブル電源について「241Wh」「602Wh」「1326Wh」「2611Wh」の4製品、それとポータブルソーラーパネルを2製品展開されています。今後、別タイプの製品も検討されているのでしょうか。
桜田社長 現在、現行モデルで最大容量の「B3300 SST」よりもう少し容量の大きいモデルと、既存のモバイル電源に“付け足し”できる「拡張バッテリー2600(仮)」の販売を検討しています。拡張バッテリーの方は2024年冬、大容量の「B6000 SST(仮)」は2025年内の発売をできればと考えております。
大容量モデルは、家庭の「蓄電用」にも使えるようにしたいと思っています。一方、事業者向けには、例えば太陽光発電をしている事業者の蓄電や、EVスタンドの電源としてといった大きな領域を取りに行ければと思っています。
また、あとは大きな工場(への導入)も視野に入れています。病院や自治体といった所も市場としては有望だと思っていて、大容量製品はこれらのを狙っていこうと思っています。
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