GPUの「レイトレーシング処理」改良の歴史をひもとく【Radeon RX 7000シリーズ編】:レイトレーシングが変えるゲームグラフィックス(第6回)(5/5 ページ)
PC用GPUにおけるリアルタイムレイトレーシングの実装において、遅れを取ったAMD。その実装方針は、NVIDIAとも異なっていて興味深い。Radeon RX 6000シリーズ(RDNA 2)からRadeon RX 7000シリーズ(RDNA 3)への進化に当たり、レイトレーシングユニットにどのような改良が加えられたのか、解説する。
AMDとNVIDIAとで異なってきた「レイトレ技術の進化方針」
この他、AMDはRDNA 3のレイトレーシング機能について、再帰的なレイトレーシングパイプラインが実行された際のパフォーマンス向上につながる以下の改良を施している。
- スタック管理のハードウェア化の実践
- Vector GPR(ベクトル命令実行用汎用目的レジスタ)の増量(RDNA 2から1.5倍に)
同社によれぱ、ここまで紹介してきた全ての改善ポイントが生かされると「同クラスのRadeon 6000シリーズ比で最大1.8倍程度のパフォーマンスを発揮できる」という。
NVIDIAがGeForce RTX 30シリーズ、GeForce RTX 40シリーズに施したRTユニットの改良と比べると、AMDの改良に派手さはない。しかし、NVIDIAが施した改良を活用するにはゲーム(プログラム)側の対応が必要なのに対し、AMDが施した改良はゲーム側の改変無しで効能を得られるのが特徴だ。
この「改良方針」の違いは、今後登場するであろう両社の新GPUにも引き継がれていくものと思われる。
レイトレ関連で、“究極的な”NVIDIA GPUへの最適化が行われた場合は「パストレーシング対応」とうわれることが多い。「Cyberpunk 2077」(上)と「黒神話:悟空」(下)はその典型例で、GeForce RTX 40シリーズ搭載PCではパストレーシングモードが利用できる。パストレーシングに対応したゲームタイトルにはこの他に「Minecraft RTX」「Portal RTX」「Quake II RTX」「Metro Exodus Enhanced Edition」がある(Cyberpunk 2077 (C)CD PROJEKT S.A. All rights reserved./黒神話:悟空 (C)Game Science Interactive Technology Co., Ltd. All Rights Reserved.)
AMDの改良方針の場合、多くのレイトレーシング対応ゲームに即効性をもって恩恵を与えられる。一方で、NVIDIAの改良方針は、ゲーム側での最適化は必要なものの、それをやってしまえば劇的なパフォーマンスアップが期待できるとされる。
ゲームを開発する側からすると、「NVIDIA専用の最適化」は、面倒な追加開発工程となる。しかし、それでも実力派スタジオや大手スタジオの一部が“わざわざ”NVIDIA GPUへの最適化に乗り出すのは、やはり現状のGPUシェアにおいて、NVIDIAが占める割合が大きいということが理由の一端となっているのだろう。
逆に、GPUのシェアで後じんを拝しているAMDが取る「改修なしで恩恵が得られる性能強化」も、これはこれで理にかなってはいる。
今後、アナウンスが期待されている、両社の次世代GPUにおいて、それぞれのレイトレ機能がどう進化するのかが楽しみだ。
実は、Radeon RX 7000シリーズ(RDNA 3)のRTユニットの“数”は、Radeon RX 6000シリーズ(RDNA 2)の同クラス比で20%程度ほどしか増やされていない。プログラマブルシェーダーのピーク演算性能(TFLOPS値)が最大2.5倍に高められているのと比べると「意外と控え目だなぁ」と思ってしまう。次世代のRadeon(RDNA 4?)で、このあたりがどう変わるのかが注目ポイントだ
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