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インタビュー

AIが「重くて、遅い」パナソニックを「軽くて、速い」会社に変える 楠見グループCEOがこだわる創業者の「これではいかん!」IT産業のトレンドリーダーに聞く!(2/3 ページ)

不安定な世界情勢が続く中で、物価高や継続する円安と業界を取り巻く環境は刻一刻と変化している。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。大河原克行氏によるインタビュー連載の第17回は、パナソニック ホールディングスの楠見雄規グループCEOだ。

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社員全員がAIを身につければパナソニックは変わる

―― パナソニックグループでは、業務効率化のためのAI、モノ作りのためのAI、 製品やサービスに組み込んでお客さまと相対するAIと、さまざまなAIが使われていますね。

楠見 AIにはそれぞれに得意/不得意がありますから、それを意識しながら、さまざまな局面でいろいろなAIを活用しています。お客さまと相対する領域であればチャットボットを通じて、より最適なサービスを提供することができますし、商品のサービスマニュアルを学習させれば、ある程度の対応ができ、人でやるよりも、むしろ効率的にできるようなシーンも生まれています。

 業務を効率化するといった用途では、使う人のスキル教育をもっと行う必要がありますが、既に多く社員が使い始めており、使ってみたらこんな使い方ができたという情報共有も始まっています。

 これからは、こんな仕事でこんな使い方をしたら、効率が5倍になったというような事例を集めたいですね。当然、競合もそれを狙っているはずです。正直なところ、AIを使うことに対して抵抗感を持っている社員もいます。しかし、当然のようにしてAIを使いこなす競合企業に対抗するには、私たち自身もAIを使いこなすことが前提になります。そうした世界が訪れるのは明らかです。

パナソニック グループ ホールディングス 楠見雄規 CEO AI 活用 門間市 松下幸之助

―― 楠見グループCEOは、どんなところにAIを活用していますか。

楠見 今はメールの返事を書いてもらったり、作った文章の推敲をさせたりという点で利用しています。実際、こういうシーンで、こういう場所で、こういう相手に、こういう趣旨でしゃべりたいといって原稿を書かせてみると、そこそこのものが出てきますよ(笑)。

 多いときには1日5〜6回使っていますが、今日は全く使わなかったという日もありますね。ただ、経営判断に活用するというところには至っていません。しかし、AIはいろいろなことを覚えていますから、関連する事柄の情報を正確に得ることができ、その点では重宝しています。

 人がモノを考える際には、いくつかの事象から判断していますが、全てを網羅して判断することはできません。判断する際に、自分が網羅的に考えることができているかどうかを試すために、AIに質問を投げてみるといったこともやっています。時々、「あぁ、そうだったね」みたいなことにはなりますね(笑)。

 実は2024年に、中国の北京で自動運転車に乗って、ちょっと驚いたことがありました。中国は右側通行ですから、 左折するときには対向車がやってきます。対向車が向かっているのに、「えっ、このタイミングで行くのか」と思ったら、何事もなく曲がっていったのです。

―― それは、中国の街中でよく見る強引な曲がり方ですか。

楠見 いや、極めてスムーズでした。しかも、ビュンと曲がるわけではなく、何の不安も感じさせずに、スッと曲がっていった。それを一般公道でできているわけです。人による運転は、常に360度を見ているわけではありませんし、測距しているわけでもありません。しかし、センシング技術とAIの制御によって、人よりもはるかに正確に、瞬時に周囲の状況を捉えて判断しているわけです。人間にはできないことやっているなと感じました。もしかしたら、ハイヤーやタクシーのドライバーよりもすごいかもしれないと感じたほどでした。

―― PX-AIを始めとするAIは、パナソニックグループをどう変えるのでしょうか。

楠見 仕事の100%をAIでやるというのは絶対に無理ですし、人が倫理観や正義感、正しい価値観にのっとってAIを活用していくことが前提となります。

 ただAIの活用方法を、社員一人ひとりが身につけてくれれば、パナソニックグループを素早い会社に変えてくれると信じています。私は、「重くて、遅い」と言われるパナソニックグループを、「軽くて、速い」会社に変えることができるのがAIだと思っています。

―― 確かに、パナソニックグループの企業体質は「重くて、遅い」と言われ続けてきました。少しは「軽く」なり、少しは「速く」なっているのでしょうか。

楠見 残念ながら、その改善に点数をつけるならば、 現状は100点満点で20点程度かもしれません。軽くて速くなった組織もあれば、そうなっていない組織もあります。

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