スパコン「さくらONE」に「NVIDIA B200 GPU」を追加 社会を支える「計算のインフラ」を整備(2/2 ページ)
さくらインターネットのマネージドスーパーコンピュータ「さくらONE」で、最新GPU「NVIDIA B200 GPU」が選択可能になった。その経緯や今後目指すことをまとめた。
次の「TOP500」へのエントリーを予定 ランキング上位を目指す
現在、さくらインターネットでは、マネージドスーパーコンピュータの「さくらONE」の他、GPU用に作成されたDockerコンテナを実行できるコンテナ型GPUクラウドサービスの「高火力DOK(ドック)」、1基のGPUをVMから利用できるVM型GPUクラウドサービス「高火力VRT(バート)」、1ボディーに8基搭載されたNVIDIA TensorコアGPUを占有できるGPUベアメタルサーバ「高火力PHY(ファイ)」を提供している。
「魚屋に例えれば、高火力PHYはブリを丸ごと一匹で売っているもので、自分で魚をおろして、それだけの量をさばけるのならば、お得である。だが、自分で魚をおろせない人に切り身として販売しているのが、高火力DOKや高火力VRTとなる。これに対して、さくらONEは、予約利用型の高火力PHYで構成された高性能HPCクラスタであり、GPU8基から約400基までの環境で、高速ストレージやインターコネクトで利用でき、正常な状態で稼働していることも監視している。料亭でブリを食べやすい状態で提供しているようなものだ」と表現した。
また、さくらインターネット AI事業推進室AI基盤事業統括の須藤武文さんは、「さくらインターネットは、大規模学習領域ではGPUの調達/提供において先手を打ち、市場での存在感を拡大してきたが、想定より早く推論ニーズが拡大し、学習ニーズと推論ニーズの両方に対応する必要が出てきた。生成AIの活用フェーズが本格化し、国産プラットフォームへの期待が高まっている。2025年8月にAI事業推進室を新設し、ニーズに対して迅速に対応できる体制を整えた。準備してきた多様な生成AI向けサービスを早期に市場投入しているところであり、日本国内に向けて、国内から安価にサービスを提供できる環境を整えている」と述べた。
さらに、さくらインターネットの小西さんは、「スパコンは単に『すごく速いコンピュータ』ではなく、社会のあらゆる分野を支える『計算のインフラ』である。医療では、薬剤化合物の分子シミュレーションやゲノム解析による遺伝子診断に使用され、防災では台風の進路予想や地震のシミュレーションなど、命に関わる部分に使用されている。最近では、AI開発にも利用されている。スパコンは社会を安全にして産業を強くし、未来を作るための国家的インフラである」と定義した。
「スパコンの実現には、ハードウェアからソフトウェア、ネットワーク、電力や冷却、運用までの幅広い知識と経験が必要である。総合格闘技のような戦い方が必要だ」とし、「さくらインターネットでは、TOP500で世界49位を獲得しているだけでなく、HPCの数値演算アプリケーションでの評価では世界43位、AI関連アプリケーションの評価では世界12位、I/Oストレージ性能の総合評価は世界9位であり、さまざまな分野で使われるスパコンを構築し、これらの実績が、さくらONEにつながっている」とした。
さくらインターネットでは、2025年11月に開催される「TOP500」へのエントリーを予定しており、性能向上に向けた取り組みを継続することで、ランキング上位を目指すという。
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