VRChat経営陣が来日 “スタンミショック”でユーザー激増からの定着──独特な“3rdプレース”ビジネス化の展望(1/3 ページ)
12月17日に秋葉原でVRChat社主催の公式オフラインイベント「VRChat Japan Business Experience 2025」が開催されました。翌18日にはビジネス/メディア向けのセッションが開かれ、同社のジェレミー・ウィールフェルダー氏(VP of Operations & Legal)、ケイシー・ウィルムズ氏(VP of Product,Design&Production)、そしてVRChat Business Development Japanの北庄司英雄氏によって、VRChatがビジネス領域でどのように存在感を出していけるかについてが語られました。
ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」は、ワールド(空間)やアバター(分身)、ファッションをユーザーが制作/公開できるUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)型のサービスとして浸透してきました。
主にVRゲームの1つとして知られてきましたが、Windows PCのデスクトップモードやAndroidデバイス、そして10月から始まったiOS版の提供によって、誰でも手軽にアクセスできるマルチプラットフォームなコンテンツに変貌しています。
バーチャルイベントへの参加や、“バーチャルなたまり場”的な友人とのハングアウトを起点にコミュニティーが生まれ、そこに課金や販売の仕組みが重なることによって経済活動が活発化してきている中、12月17日に秋葉原でVRChat社主催の公式オフラインイベント「VRChat Japan Business Experience 2025」が開催されました。
動員数は500人規模とされており、ビジネス層の関心が高い場として設計されていたことが読み取れます。
翌18日にはビジネス/メディア向けのセッションが開かれ、同社のジェレミー・ウィールフェルダー氏(VP of Operations & Legal)、ケイシー・ウィルムズ氏(VP of Product,Design&Production)、そしてVRChat Business Development Japanの北庄司英雄氏によって、VRChatがビジネス領域でどのように存在感を出していけるかについて語られました。
VRChatの本質は「サードプレース」
VRChatの中核は、仮想空間という器そのものよりも、UGCが集まる場と、そこで起きるソーシャルな相互作用にあります。
ユーザーはアバターで同じ空間に入り、会話し、イベントに参加し、コミュニティーを作ります。ワールドもアバターもバーチャルファッションも、ギミックの数々もユーザーが制作/公開できます。落ち着くチル空間で友達と雑談したり、コンサートホールでバーチャルライブを見たり、ゲームで遊んだり、バーイベントにキャストとして参加したりと、使い方は多様です。そしてVRChatに人が集まり続けること自体が価値になっています。
この価値を整理するキーワードが「Third Place(サードプレース)」です。サードプレースとは、家庭(第一の場所)や職場(第二の場所)とは別に、人が集まり、会話や交流が生まれ、偶然の出会いが起きる第三の居場所を指す概念です。
同じ場所に居合わせて得られる体験そのものが価値になります。なお、VRChat側も、近年の公式発信で「(VRChatは)a true Third Place」と明示的に位置付けています。
2021年にNetflixからVRChatに転職したケイシー氏は、「VRChatに初めて入ったとき、どうすればいいのか戸惑った」といいます。これは、VRChatに触れてみたけどなじめなかった方々が口をそろえて言っていることでもあり、大きな課題であるといえます。
ところが2024年におきた“スタンミショック”(日本で人気ストリーマーのスタンミ氏がVRChatを始めてから、VRChatに興味を持ってアクセスするユーザーが激増した現象)以後、引き続き滞在するユーザーの行動から、サードプレースを見つけられた人ほど(VRChatへの滞在を)継続する傾向が見えたとのことです。
そのため、(VRChatを伸ばすためには)「人が自分の居場所を見つけられるようにする」ことが重要だと述べました。理念としてサードプレースを掲げるだけでなく、機能開発の優先度としても扱っていくといいます。現在開催中のイベントを見つけやすくする導線や、興味に合うグループ/コミュニティーを発見する仕組み、友人との接続を補助する機能などでVRChatになじむまでの摩擦を減らし、滞在時間やリテンションにつなげます。
VRChatがビジネスに変換しようとしているものは、まずこの「サードプレースとしての価値」だと言えます。
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