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14年前の“黒歴史”を経て生まれたNVIDIA「RTX Spark」は何を変える? 「AI PC」から「Agentic PC」へと昇華するローカルAIの道筋:もう、どうなってもいいや!(2/3 ページ)

NVIDIAが発表したWindows向けの新SoC「RTX Spark」。14年前の「Windows RT」における苦い経験から一転、CPUとGPUを1つのパッケージに統合した革新的なアーキテクチャにより、薄型軽量ノートPCの常識を覆す設計を可能にした。本記事では、PCが「Agentic PC(エージェント型AI PC)」へと進化する新たな潮流を解説する。

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RTX Sparkの特徴

 十数年前には大失敗に終わったWindows RTとNVIDIA SoCだが、今回のRTX Sparkはどうなるのだろうか。


NVIDIA RTX SparkのGPU概要(出典:NVIDIAのRTX Spark説明会の資料)

 まず、Windows RTが失敗した最大の理由である「Arm対応のアプリケーションがない、そもそもインストールできない」という問題は既に取り除かれている。

 Microsoftは、2016年にArm版Windows(当時はWindows 10)の構想を明らかにしたときに、Windows RTにはArmアプリケーションがなく、そもそもインストールできなかったという課題を解決すべく、後に「Prism」と呼ばれることになるバイナリ変換機を標準搭載し、x86アプリケーションがArm版Windowsでも動くようにした。

 同時に、Arm版Windowsは、x86版と同じフル機能のWindowsとして、機能を限定するなどの制限を一切設けなかった。

 それから、最初のシリコンパートナーだったQualcommと協力して、少しずつArmのネイティブアプリケーションを増やすなどの活動を地道に行ってきて、前回の記事で紹介しているように互換性の問題はほぼ解決している状況だ。

 RTX Sparkの最大の特徴は、CPUとGPUがチップレットとしてSoCのパッケージに統合されていることだ。RTX Sparkでは、NVIDIAが開発したGPUダイと、NVIDIAのパートナーであるMediaTekが開発したCPUダイがパッケージ上で混載されている(いずれも製造はTSMCで、3nmノードが利用されている)。


NVIDIA RTX SparkのCPU概要、メモリ帯域が毎秒300GBと、通常のPC向けSoC(毎秒150GB)の倍の帯域を実現している(出典:NVIDIAのRTX Spark説明会の資料)

 これにより、NVIDIAのGPUダイはMediaTekのCPUダイと2つのことをシェアしている。1つはメモリだ。通常、NVIDIAがノートPCベンダーに提供している単体型GPUは、GDDRというグラフィックス専用のメモリを搭載している。

 このGDDRはグラフィックス用としては高性能なのだが、特別なDRAMであるため、容量当たりの単価が高く、大容量を備えるのは難しい。しかし、RTX SparkのGPUは、NVIDIAのNVLink C2Cという専用内部バスを通じて、CPUのメモリコントローラーに直結されており、CPUに接続されているメモリの一部をGPUメモリとして利用できる。


RTX Sparkでは、GPUがCPUのメモリを共有している。SoCの周囲にあるのがメモリで、最大128GBに対応可能だ

 また、CPUのメモリコントローラーも一般的なメモリコントローラーが128bit幅のメモリバスであるのに対し、RTX Sparkのメモリコントローラーは256bit幅になっている。それにより、LPDDR5x-9400を利用した場合の帯域幅は毎秒300GBとなっており、一般的なPC用SoCの毎秒150GBに比べて倍の帯域幅を実現する。

 これにより、例えば128GBのメインメモリを搭載したシステムの場合、32GBをCPUに割り当て、残りをGPUに割り当てるという使い方ができる(メモリの分配はNVIDIA AppというNVIDIAの設定アプリから静的に変更できる)。

 フロンティアAIモデルをPCにインストールして使う場合には、メモリの容量と帯域幅が重要になる。RTX Sparkは、この大容量・広帯域メモリによって、フロンティアAIモデルをローカルで実行できる環境を実現しているのだ。

 もう1つシェアしているのは、熱設計の枠だ。AMDないしはIntelのCPUと、NVIDIAのGPUが別チップとして搭載されている場合、CPUにはTDP(Thermal Design Power)という熱設計の枠が適用され、GPUにはTGP(Total Graphics Power)と呼ばれる枠がそれぞれ適用される。

 CPUが45W、TGPが120Wの場合、OEMメーカーの設計では165WのTDPを処理するのと同じような熱設計を施す必要が生じ、大型のヒートシンクやファンを採用しなければならず、薄型化と軽量化の阻害要因となる。


Microsoft Surface Laptop Ultraの基板、ヒートシンクと冷却ファン

 ところが、RTX SparkではCPUとGPUは別チップではあるが、パッケージの中で混載されているため、熱設計上は1つのチップとして扱える。

 つまり、CPUとGPUの発熱を合わせて処理できる。これは、CPUをあまり使っていないときにはGPU側の発熱を増やせるし、その逆も可能ということで、熱設計上はとても効率が良いことになる。

 実際、RTX SparkのTDPは45〜80Wの間で可変(Configurable TDP)となっており、OEMメーカーがより薄型のノートPCにしたい場合には45W、多少厚く重くなっても性能重視なら80Wなど、熱設計の考え方に応じて変えられる。

 しかも、これにより従来の単体型GPUでは設計できないような、薄型軽量のノートPCを製造するといったことも実現できるのが、RTX Sparkの2つめの特徴になる。

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