> レビュー 2003年5月28日 11:59 PM 更新

プロの定番高級機をデジタル化「1」の称号を与えられた実力
キヤノン EOS-1D(1/3)

製品写真
総合評価7
デザイン9
ユーザーインタフェース7
機能9
性能7
バッテリ9
ソフト4
レンズ8
レイティングポリシー

評価のポイント

デザイン EOS-1Dが世に出た当時(2001年暮れ)、ようやくEOS-1ベースの現実的なデジタルが出てきたか、と感慨深い思いをした記憶がある(ここではEOS D2000やEOS D6000の存在は価格が非現実的だったので記憶から消す)。

 EOS-1系のこのデザインは、正直なところをいえば「高級感」を漂わすイメージというよりも「質実剛健」そのもの、という気がする。フラッグシップ機の称号を冠したプロ向けボディが登場した出来事は、やはりディープインパクトだった。徹底した防滴・防塵構造を施すことで、プロの過酷な撮影条件に耐える高い信頼感をゲット。なによりも使い慣れたEOS-1の形をしていることは、手放しでプロたちに喜ばれた。瞬く間に報道やスポーツ系のカメラマンたちに支持されていったことは周知の通りである。

ユーザーインタフェース

     時代背景としては、すでにニコンのフラッグシップ機(=D1)がひと足先にこの世に生を受け、プロの現場で活躍していた(F5をベースにしたボディ)。EOS-1Dもまた、フラッグシップ機の称号を与えられたデジタル一眼レフである。企業が時間をかけて育てたブランド名(=EOS-1)を汚すような機械であるはずがない。

     銀塩カメラの最高級機、EOS-1Vの優れた基本性能と操作性をきっちりと継承。撮影者の意志にクイックに反応するレスポンス性能、視野率100%の高性能ファインダー(見やすい!)などが、デジタルに拒否反応を示しがちな銀塩ファンたちのハートをつかんだ。ミニマムな話をすると、ファインダー像消失時間がEOS-1Vと同等の87msであるあたりが、プロの撮影意欲を駆り立たせる、まさに銀塩ライクのフィーリングが得られるカメラなのである。言い方を換えると「デジタル、アナログを意識させない」インタフェースだ。

     要求したいポイントもあるが、それは1Dsのほうに記述し、ここでは差し控えることにする。

機能

     機能面で最大のウリはやはり連写スピードだ。デジタルAF一眼レフとして世界最速の約8コマ/秒(連続約21コマ)を実現。しかもJPEGラージファインでの数値だ。後発のEOS-1Dsよりもオーバースペックな要素で、この点が両者の撮影機材としての役割をすみ分けしている。

     AF45点測距と高速連写性能で、ライバル機種(もちろんD1HとD1Xのこと)を寄せ付けない実力を持つ。ちなみにRAWとJPEGの同時記録は、1Dで新設された偉大な機能だ。

     全般に「機敏」がキーワードとなるカメラだ。起動時間やオートパワーオフからのお目覚めもすこぶる速い。PCへのデータ移動は、ノートPCならカードリーダー。デスクトップPCならIEEE1394ケーブルで。USBではないところがやはりプロ仕様だ(EOS 10DはUSBである)。

性能

     ここでお断りしておくが、1Dが連写機能に優れているからといって「モータースポーツの撮影シーンに最適」などと言うつもりはない。何を撮ってもいいと思う。コンシューマーの方が購入して家族の記録に使ったってよいのだ。

     ただし、「その用途にこのボディ剛性が必要なのか?」という点だけを確認していただきたい。プロたちは1Dや1Dsの「酷使に耐える堅牢さ」を最も支持している。悪天候の中でも傘など差さずに撮らなければならない、という需要に対応した作りがなされているのだ。プロに不安を与えないことこそが、このカメラの一番の性能かもしれない。

バッテリ

     バッテリおよびチャージャーは1Dsと共通パーツ。120分でチャージを終える。持ち時間に不満を感じることはなかった。放電してから充電すべし。1Dsと1Dを所有し使い分けるプロも多いので、バッテリが兼用できることは大きなメリットだろう。そのほかに特記事項は見当たらず。

ソフト

     これについてはあまり多くを語りたくない。ハードに開発神経を傾注してくれているから、カメラ本体(ファームウェアを含む)は業界トップの実力だ。ソフトまでもが業界トップでは、他社メーカーの立場がなくなってしまう。そう考えることにしよう。大丈夫だ。キヤノンならいずれすばらしい専用ソフトを同梱してくれるだろう。いや、別売りでお金を払ってもいい。確実にいいものを用意していただけることを強く願う。

レンズ

     1Dの画角は1Dsとは異なり35mmフルサイズではない(EOS D6000とほぼ同等の大きさ)。焦点距離の感覚は35mmカメラ換算で1.3倍となってしまう。超広角の撮影をしたいなら、ここを考慮に入れた選び方をしなければならない。それでも、APSサイズよりも拡大化し、画角の倍率変化が縮小したことは発売当時、もろ手を挙げて喜ばれた。

     レンズ選びに関しては、けだし名言とされるフレーズがある。それは……、「金に糸目をつけるな」。

     このクラスのカメラを使用するユーザーが、レンズに対する出費を惜しむとは考えにくいのだが、L玉を何本も揃えるのには相当な資本力が必要だ。EF400mm F4 DO IS USMなども、1Dにはマストなアイテムかもしれない。カメラマンの設備投資は大変である。

総合評価

 光学的な疑色軽減(=ローパスフィルター)と、ソフトウェア的な疑色軽減とのバランスが練りに練られた415万画素CCDを搭載したデジタル一眼レフ。解像感は求めたが画素数は追及していない。大事なのは作画機能の実力だ。そんな明確なメッセージを感じる1台である。1Dの開発にもっとも求められたものは「高速連写の需要への回答」だった。8コマ/秒と画質を求めるうえで、必要以上の画素数追及はコンセプトから外れたことだったのである。

 高速連写の1Dだが、もちろん1枚1枚コツコツと撮ったっていい。銀塩のハイエンド一眼レフEOS-1と同じ感覚で使えるうれしさ、わくわく感が、このカメラの最大の魅力になっている。快適な撮影レスポンスがうれしいのだ。データの書き込みでシャッターが降りなくなる瞬間は、「やっぱり、デジタルはこれだから……」とブルーになる瞬間だが、1Dにはそういう不快な症例は起こらない。これも、デジタルを感じさせない要因の1つかもしれない。

ベンダー製品担当者からの一言

 大型415万画素CCDを搭載し、最高約8コマ/秒(連続約21コマ)の高速連写を実現したプロ用最高級デジタルAF一眼レフカメラ。報道やスポーツ、スタジオ撮影などプロのニーズを満たす高画質と高速レスポンスを実現しています。(キヤノン販売 広報部 徳重義弘)

主要スペック

撮像素子高感度・高解像度大型単板CCDセンサー
有効画素数415万画素
シャッタースピード1/16000−30秒(1/3段ステップ)、バルブ、X=1/500秒
感度(ISO)200〜1600相当(1/3段ステップ)、ISO100、3200相当の感度拡張が可能
焦点調節オート/マニュアル
最高品質時の最大画像解像度(W×H)2496×1662ピクセル
記憶メディアCFカード(Type I/II準拠)
画像ファイル形式DCF(JPEG)、RAW
PCとのインタフェースIEEE 1394(専用ケーブル使用)
サイズ(W×H×D)156×157.6×79.9ミリ
重量1250グラム(本体のみ、電池335グラム)

[島津篤志(電塾会友), ITmedia ]

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