> レビュー		2003年10月16日　12:28 PM 更新

無敵のデジ一眼入門機――キヤノン EOS Kiss Digital（2/3）

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完成度の高いKiss D専用レンズも開発

　レンズ付属モデル「EOS Kiss Digitalレンズキット」に付属の「EF-S 18-55mm F3.5-5.6 USM」は、Kiss D専用に新開発されたものだ。同レンズは単体では販売されず、マウントサイズの関係でKiss D以外のEOS系デジ一眼には装着できない。

　EF-S 18-55mm F3.5-5.6 USMは全長を抑えた超コンパクト設計のズームレンズながら、実にあなどれない実力を有している。コストパフォーマンスの見地から言うと、画質は文句なしのレベルにある。詳細は作例を参照されたい（作例ではすべて付属レンズのみを使用している）。

　Kiss Dレンズキットは、入門者にとっては「交換不要のレンズ固定式一眼レフ」といった受け止め方をしてよい完成度だと思う。ちなみに、Kiss Dのレンズの焦点距離は35ミリフィルム換算で約1.6倍。うれしいことに、すべてのEFレンズが使用可能だ。

　Kiss Dは、他のEOS Digital（1Dsや1D、10D）では装備している背面のサブ電子ダイヤルが見送られ、十字キーを採用している。

EOS Kiss Digitalの背面。サブ電子ダイヤルではなく、中央にSETボタンを配した十字キーを採用している

　露出補正は1/3ステップ固定制である。カメラの測光値を中心にオーバーとアンダーの3画像を連続撮影するAEB（Auto Exposure Bracketing）で撮影する場合、1/3ステップでは露出の補正幅が少ないという気もするが、致命的ではない。評価測光の露出傾向は、10Dよりむしろ良好の印象だった。

　10Dで撮影した風景写真は、EOS Digitalの他機種（1Dや1Ds）に比べてISO100でもオーバー気味になる傾向がある。筆者が普段使用している10Dでは、中央の被写体が周りよりも暗いロケーションの場合は、露出補正で1/3〜2/3程度アンダー側に設定するのが常である。この設定が10Dの適正露光と信じて常用しているのだが、Kiss Dではそんなことをしなくても露出ミスは少なかった。短期のレビュー期間だったが、「これはマルチスポット測光ではないか」と思うくらい優れたバランスを感じた。

　とはいえ、「撮りたい」と思った時のシチュエーションが、カメラにとっては過酷な光の条件だった、というのはよくあることだ。Kiss Dでも、もちろんハイライト部に白飛びが起こることはあった。だが、全責任をカメラに押し付けるのも酷な話である。Kiss Dの評価測光については不評も耳にするが、筆者は及第点としたい。

大らかに楽しむホビーユースに最適

　銀塩カメラからKiss Dへの乗り換え（もしくは併用）を検討しているユーザーは注意が必要だ。例えばあなたがEOS 3やEOS 7をお使いなら、10D以上でないと質感や操作系に対する違和感が生じるはずだからである。Kiss Dはデジタル一眼レフとしては破格の安さでも、銀塩一眼レフとしては高級機の価格帯に属する。Kiss Dに限ったことではないが、そのコスト感覚でデジタル一眼レフに接すると悲劇を招く。

　筆者の意見では、銀塩カメラからの乗り換え組には10Dの方が無難だろう。Kiss Dではカメラ任せの要素が増えるため、10Dほどには撮影者が作画にこだわることはできないためである。例えば、AIサーボ（動体追尾で合焦を続ける機能）とワンショットAFが手動で切り替えられないオート設定のため、意図的にピントが合っていない動きのある写真を撮りたくても、シャッターレリーズはなかなか降りない仕組みなのだ。

　だが、割り切って使うなら偉大なサブ機となるだろうし、もちろんメイン機として考えてもらってもよい。Kiss Dのバッファ能力は10Dの半分以下なので、書き込みには少々ストレスを覚えるかもしれないが、デジ一眼を初めて購入する人にはあまり気にする必要のない問題だ。大らかに楽しむホビーユースに最適な1台である。

　なお、レビューに使用したのがβ機だったということもあり作例では避けているが、Kiss DのISO800の発色が素晴らしかったことを付け加えておく。もちろんノイジーな粒状感は出るが、許容範囲内だし、パラメータ1で撮る夕景は自然な色調でなかなかのものだった。機会があればぜひお試しいただきたい。

[島津篤志（電塾会友）, ITmedia ]

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