海外目線で見る、日本のケータイメーカーの弱点とは:超ガラパゴス研究会リポート
第3回目となるIT国際競争力研究会(俗称:超ガラパゴス研究会)に登場したのは、ユーロテクノロジー・ジャパンの代表取締役社長、ゲルハルト・ファーソル氏。日本の端末メーカーが抱える問題を、海外目線で分析した。
6月11日、虎ノ門フォーラムで「第3回超ガラパゴス研究会」が開催された。この研究会は、NPO法人ブロードバンド・アソシエーション IT国際競争力研究会(俗称:超ガラパゴス研究会)が主催する有識者懇談会。委員長に慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授の夏野剛氏、副委員長に日立コンサルティング 取締役 マネージングデレクターの芦辺洋司氏を迎え、ITや通信分野の各企業、大学からメンバーを募って毎月開催している。
これまで同研究会では、日本における通信産業の変遷や歴史的経緯をたどるとともに、電機産業が抱える本質的な問題やコンテンツ業界が直面している市場変化への対応などについて、企業の枠を超えた意見交換を行ってきた。第3回となる今回は、日本の携帯電話産業をテーマに据え、ユーロテクノロジー・ジャパン 代表取締役社長のゲルハルト・ファーソル氏が「世界の携帯電話市場のパラダイム変更と日本の携帯電話メーカーのチャンス」と題した講演を行った。
ファーソル氏は、現在の日本の携帯電話について「性能も品質も世界一。世界で使われている最近の通信、携帯電話関連のサービスや技術のほとんどは、日本が初めて導入したもの。海外の携帯電話も高性能になってきているが到底追いつかない」と述べ、日本の携帯電話の先進性と高品質性を高く評価した。
ファーソル氏は全世界における携帯通信産業の市場規模は2005年時点で53兆円にも上り、携帯電話端末だけでも10兆円の市場規模があると紹介。産業として非常に巨大なだけでなく、今後さらに拡大することが確実な優良市場であると説明する。また、全世界における日本メーカーのシェアについては「日本製の携帯電話はたったの5000万台。日本にとってビジネスチャンスはたくさんある」と述べ、日本人特有の真面目さや職人気質についても「外国人には真似のできないもの」と評価した。
日本の携帯通信産業界が抱える問題点については、リーダーシップの欠如からくる責任転嫁の応酬や自社ブランドに対する考え方の甘さなどを指摘し、「日本のブランド力は世界でも非常に低いレベル。例えばナビタイムは非常に優れたサービスであるにもかかわらず、Nokiaの社員は誰も知らなかった。また日産自動車ではカルロス・ゴーン社長が自社ブランドの価値を自ら調査したところ、マイナス20万円の価値だった。つまり日産の自動車は店頭価格よりも20万円安くないと売れないということだった」といい、“ブランド力の育成こそが、世界で成功するための必須条件”という見方を示した。
リーダーシップの欠如については、パラダイムシフトの必要性を強調。日本企業の構造的な問題や、英語によるビジネス力が不足している点に触れ、高い技術力がむだになっていることを懸念した。
後半のディスカッションでは日本の企業体質についての意見が飛び交った。
夏野氏が「むちゃくちゃ耳が痛い。ドコモなどでこういう話をすると『そうなんだよね!』とは言うものの、それで終わってしまう。何だよそれっていう」と述べると、ソフトバンクモバイル 取締役執行役副社長の松本徹三氏も「会社で言うと『会社の方針に、いちいちケチをつけるな』という話になる。結局、その気があるかどうか。SamsungやNokiaはその気があるから成功する」と同意。またメリルリンチ日本証券 投資銀行部門 副会長 マネージングディレクターの佐藤文昭氏も「やっているのだろうが動きが遅い」と話すなど、日本企業と海外企業との温度差に話が集中した。
最後に夏野氏が「海外で面白いのは、携帯電話業界を牽引しているのがAppleやGoogle、RIMといったインターネット企業であるということ。すべての企業が日本のような標準化とは無縁の企業が引っ張っている。こうしたパラダイムシフトが起こっているからこそ、日本の企業にも十分勝機はある」とし、高性能を売りにした製品の世界展開を成功に導くカギは「企業体質の改善にこそあるのではないか」と指摘した。
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