iPad営業の強力な武器、若手社員が内製――動画で“心に残るプレゼン”を(2/2 ページ)
シナリオも撮影も、出演も社員――。ソフトバンクテレコムでは、こんな内製のプレゼン動画がiPadの強力な営業ツールになっているという。いったいどんな動画なのか、どこが相手の心に響くのか。プレゼン動画の制作担当者に聞いた。
俳優も撮影スタッフも“サービスを熟知した中の人”
プレゼン動画の強みは、サービスの内容が相手に分かりやすいことだ。この効果をしっかりと出すためには、サービスを提供する企業の社員自身が制作するのが効果的だとチームはみている。サービスの内容を十分理解していれば、説明のためのセリフから特徴の打ち出し方までをスピーディに最適化できるからだ。
「動画のシナリオには本当にこだわっています。作り手側としてはつい、いろいろ盛り込みたくなってしまうのですが、営業からは“2分を切るくらいの短いものがいい”といわれます。iPadでプレゼン動画を見せているときにじっと黙っているのがつらいようで、単発でスカッと見せて補足の説明ができるものが使いやすいようです」(加藤さん)。
社内で出演者やナレーターを公募し、写真やプロフィールをデータベース化しているのも、おもしろいところだ。「最初は主演男優の彼(高田悠介さん)で撮影していたのですが、それだけではなかなか表現の幅が広がらないということで、社内で出演者を公募しました。俳優役とナレーション役を募集したら、30人くらい集まりました」(榎本さん)
データベースには顔と全身の写真に加え、簡単な演技の動画と、文章を読み上げた音声が登録されている。「これを作るまでは、オフィスのフロアをまわって直接スカウトしていました。たいていは断られてしまうんですけど……」(高田さん)。
動画に対するチームのモチベーションは非常に高く、スキルアップのために自主的に作成したオリジナル作品を評価し合っているという。「チームに分かれてどちらが良い動画を作るかを競ったりもしています。作った動画は、営業の人に投票してもらって」(加藤さん)。「プレゼン動画を担当するようになってから、映画やCM、テレビ番組の見方が変わりました。面白いと思ったカメラのアングルや、効果的な光の加減をチェックしたりしています」(榎本さん)
プレゼン動画は早くも100本以上が制作され、社内SNSのクリアベイル上にアーカイブされている。営業は、クリアベイルから最新の動画をダウンロードし、いつでも利用できる。「プレゼン動画を利用するためのグループには2000人以上が参加しています。利用者はダントツで多いですね」(加藤さん)
プレゼン動画を日々利用している営業部隊の反応も上々だ。社内アンケートを行ったところ、営業スタッフの76%が商品やサービスの説明がしやすくなったと回答しており、“やはり動画はいい。提案書もいいが動画があると非常に分かりやすく説明できる”“これからもどんどん動画を作ってほしい”と頼られている。
プレゼン動画の“次”を模索
プレゼン動画はそれを見た社外の企業からも注目されており、作ってほしいといわれることしばしばだという。そこで試験的な試みとして、法人顧客が自社で使えるプレゼン動画を無料で1本制作するというキャンペーンを展開し、12本の動画を作成したという。「先方の担当者と何度もやりとりしながら、提案書やカタログなどの素材も見せてもらい、時間をかけて進めました。お会いしてから編集終了まで1カ月ほどかけ、お客様からは好評をいただきました」(榎本さん)。
動画クリエイティブチームでは、“プレゼン動画の次は何か”についても考え始めている。「iPadでもっと効果的なプレゼンができないかと考えていて、いろいろと試作しています。まだお見せできませんが……」(加藤さん)。“動画は伝わる!”と気づいて1年半、数々の経験を踏まえて次のステップに進もうとしている動画クリエイティブチーム。次世代プレゼンテーションの進化はまだまだ止まりそうにない。
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