4月から始まる政府の大型補助金、節電・蓄電・発電機器の導入コストを低減:補助金(2/2 ページ)
国のエネルギー政策に基づいて、省エネを推進するための様々な補助金制度が設けられている。毎年度の国家予算が割り当てられるため、いったん3月末で終了するものが多いが、4月からの2012年度に申請できる大型の補助金制度が現時点でも4種類ある。
蓄電池の導入にも210億円の補助金
節電を目的としたエネルギー管理システムに加えて、蓄電・発電機器に対する補助金制度も2つある。1つは「定置用リチウムイオン蓄電池」に対する補助金で、BEMSやHEMSと同様にSIIが経済産業省からの業務委託で運営する。申請対象となる機器の受付が3月21日から開始された。2012年度と13年度の2年間で、総額210億円の適用を見込んでいる。
このリチウムイオン蓄電池に対する補助金制度は、事業所向けと家庭向けの両方が対象になる。蓄電池本体と付帯システム、工事費を含めた総額の3分の1が補助金として支払われる。住宅の場合は上限が100万円、事業所では1億円が上限だ。蓄電システムを事業所や家庭向けに貸し出すリース事業者なども申請できる。
ただし補助金を受けるためには、導入する蓄電システムがSIIの定める基準に合致していることを、指定の認証機関で証明してもらう必要がある。その点では、できるだけ認証実績のある製品を導入したほうが安全と言える。
ピーク電力削減とコスト負担のジレンマ
昨年夏の電力不足を契機に、蓄電・発電機器の製品化が相次いでいるが、現状ではコスト対効果の観点から導入に二の足を踏む企業や家庭が多い。蓄電システムによる電力料金の削減効果は、料金の安い夜間電力を活用できる点にある。夜間に貯めた電力を昼間に利用することで、昼夜の電気料金の差額分の恩恵を受けることができるわけだ。
例えば東京電力の料金メニューを見ると、家庭向けの契約では夜間の電気料金が昼間の3分の1程度になる。事業所向けの高圧電力契約(50kW以上)の場合は、料金体系が家庭向けよりも複雑なため一概には言えないが、おおむね2分の1程度である。しかし現状では家庭向けであれ事業所向けであれ、蓄電システムの導入コストを短期間に回収できるほどの削減効果を期待するのは難しいと言われている。
一般的な例を挙げると、家庭向けの蓄電システムは工事費を含めて現在の価格は200万円程度だが、夜間電力の活用による電気料金の削減額は年間5万円から10万円の範囲にとどまる。コスト回収に20年から40年もかかる計算だ。導入コストの3分の1を補助金でカバーできたとしても、回収までに10年以上はかかってしまう。この問題は事業所向けの蓄電システムでも同様である。
とはいえ昼間のピーク電力を抑えることで、夏の電力不足解消に貢献できるメリットがある。補助金によって数多くの事業所や家庭が蓄電システムを導入すれば、ピーク電力をカットできる効果は大きい。一方で蓄電池の価格が今後下がっていくことは確実なため、適切な導入時期の見極めは難しいものの、早く導入すればコスト回収が進められる。
蓄電システムだけではなく、住宅用の太陽光発電に対する補助金制度もある。補助金を有効に活用して蓄電・発電システムを導入する企業や家庭が増えることを期待したい。
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