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キーワード解説「特定規模電気事業者(PPS:Power Producer and Supplier)」キーワード解説

企業向け電気料金値上げにより、企業にとって電力コスト削減は重要な経営課題となった。課題解決に貢献する可能性を秘めているのが「特定規模電気事業者」である。

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 特定規模電気事業者とは、大量の電力を消費する企業や工場など(特定規模需要家)に電力を供給する業者を指す。PPSという通称が定着しているが、経済産業省は2012年3月に通称を「新電力」に改めた。

 かつて電力小売事業は東京電力や関西電力など、日本の各地域に発電所や送電網を保有している業者(一般電気事業者)が独占していた。例えば、ある場所に建物を立てて、その建物で使用する電力を調達しようとすると、建物が立地している場所を事業エリアとする一般電気事業者から購入するしか方法はなかった。

 この状況が変わったのは2000年。改正電気事業法施行により、電力小売の自由化が一部認められ、契約電力が2000kW以上の需要家を対象とした電力小売事業への新規参入が可能になった。この電力小売自由化によって生まれたのが特定規模電気事業者である。その後電力小売自由化は進み、2004年には契約電力500kW以上、2005年には契約電力50kW以上と、自由化の対象は広がっていった。

 契約電力50kW以上の特定規模需要家は、一般電気事業者だけでなく複数の特定規模電気事業者と交渉して、低価格で安定供給を約束する事業者を選んで電力供給契約を結べる。特定規模電気事業者は、電力コスト削減に役立つ存在と言える。政府は、一般電気事業者が独占していた電力小売事業を自由化し、その範囲を広げていくことで、業者の新規参入と業者間の競争による電力コスト下落を狙っている。

 先に述べたように、電力小売自由化の範囲は広がっているが、参入する業者はまだまだ少ない。富士経済が2011年12月に発行した調査書「電力・ガス・エネルギーサービス市場戦略総調査 2012」の調べによると、電力小売自由化の範囲は、日本全体の電力需要の60%程度まで拡大している。しかし自由化対象範囲のうち、特定規模電気事業者のシェアは3.5%にとどまっている。

 特定規模電気事業者は、全国各地の工場が自家発電設備で発電した余剰分や、自身が保有する発電所で発電した電力などを確保して、一般電気事業者の送電網を通して需要家に電力を供給する。この際、特定規模電気事業者は送電網の使用料として、一般電気事業者に託送料金を支払う必要がある。この託送料金の算出根拠が不明瞭で、高価であることなどが、新規参入者を阻害する要因とされている。

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