検索
特集

供給不足による停電も十分考えられる、今冬の北海道の電力事情電力供給サービス(2/2 ページ)

一般電気事業者9社(沖縄電力を除く)が提出した、今冬の電力需要予測と最大供給力見通しについて政府は「需給検証委員会」を開き、各社の見通しを検証した。各社の予備率は最低限必要な3%を超えているが、北海道電力による供給が不足する可能性が高いことがはっきりした。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

火力発電施設が1つでも停止すると危機を招く

 もう1つ不安を感じさせる要因が、北海道電力の発電所で使用している発電施設だ。比較的大きなものが多いため、1つが停止するとその影響が大きいのだ。例えば北海道電力が利用している火力発電施設の中で最大の出力を誇る「苫東厚真火力発電所」の4号機(出力は70万kW)が停止すると、予備率が12%以上低下する。他社からの融通がなければ完全に供給不足となる。

 連系設備と同様に、火力発電所も予期せぬトラブルで停止することがある。図3はトラブルで発電所が停止したことによって発生した被害状況を示すデータだ。トラブルによる停止で低下した発電量を、1日当たりの平均値で表した「年度平均」と、その年度で発生した最大規模のトラブルによって低下した発電量を示す「年度最大」の数字を示している。


図3 予期せぬトラブルで発電所が停止したことによって発生した被害をまとめた表。過去5年分のデータをまとめてある

 このデータによると、2011年度は発電所のトラブルで発電量が1日平均31万kW低下しており、最大のトラブルが発生したときは96万kW低下している。過去5年間で最大のトラブルが発生したのは2010年度。このときは発電量が137万kWも低下している。この値は過去15年間のデータを見ても最大の値になるそうだ。

連系設備がフル稼働していたとしても……

 このデータを見て分かることは、2012年度最大のトラブルが冬の間に発生したら、北海道・本州間連系設備がフル稼働していても、供給不足に陥る可能性が高いということだ。2011年度最大のトラブルでは、発電能力が96万kW低下した。このトラブルと同程度のトラブルが2013年2月に発生すると、60万kWの融通を受けていたとしても供給不足に陥る。2010年に発生した、発電能力を137万kW低下させたトラブルが発生したら、12月〜3月のどの月でも供給力不足となる。

 北海道電力はほぼすべての火力発電所の補修、点検作業を11月までに完了させるために作業を続けているという。冬の間は停止させることなく、稼働を続ける構えだ。北海道・本州間連系設備と同様に、万が一トラブルが発生したとしても、短時間で修復できる体制を作ることも必要だろう。

 冬の北海道では、水道管の凍結を防ぐためのヒーターや、路上の雪を融かすためのヒーターが稼働し始める。このヒーターは電力で動作している。このような凍結、積雪対策に必要な電力が一時的にでも途切れると、水道が停止したり、路上の雪が凍結して走行不能になるなど、かなり大きな被害が発生する。

 需給検証委員会は、冬の北海道では、電力は人間が普通の生活を続けるために欠かせないものであり、停電は何としても避けなければならないとしている。しかし、冬の間に何のトラブルも発生しないと期待するのは楽観的過ぎるだろう。2012年度最大のトラブルが冬の間に発生する可能性だって十分にある。原子力発電所の再稼働が期待できない以上、厳しい節電目標を設定することになるはずだ。

*この記事の電子ブックレットをダウンロードへ

前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る