大学のキャンパス内でスマートグリッドの構築が始まる:エネルギー管理
東京工業大学の大岡山キャンパスに今春完成した「環境エネルギーイノベーション棟」と、キャンパス内のほかの建物を接続するスマートグリッドの構築が始まった。まずは、太陽光発電システムの発電状況と、電力需要に応じて、空調機器の運転を制御する機能から構築していく。
NTTデータカスタマサービスは、東京工業大学の大岡山キャンパスに「東工大キャンパススマートグリッド」の構築を始めると発表した。まずは、今春完成した環境エネルギーイノベーション棟(図1)が備える太陽光発電システムの発電状況や建物内の電力需要を監視して、消費電力を一定に抑えるために空調機器を制御する機能から構築する。この機能の構築には、NTTデータカスタマサービスが提供しているBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)「RemoteOne」を利用する。
図1 東京工業大学の大岡山キャンパスの「環境エネルギーイノベーション棟」。南側と西側の壁面に加えて、屋上に合計で4570枚の太陽光発電パネルを設置してある。太陽光発電パネルによる電力で不足する場合は燃料電池を利用して電力をまかなう
NTTデータカスタマサービスは、今回のシステムを構築するにあたって、機器の制御や機器の消費電力のデータなどを収集するために、スマートグリッド向けの標準プロトコルである「IEEE1888」を利用する。
空調機器や照明などを制御する通信方式としては、「BACnet」「LonWorks」「Modbus」といったものがあり、大規模なビルではこのような方式で通信することが多い。しかし、これらの通信方式の間には互換性がない。そこで、NTTデータカスタマサービスはこれらの通信方式や、メーカー独自の通信方式と、IEEE1888を相互に変換するゲートウェイ(GW)を用意する。ゲートウェイを通してネットワークに出てきた通信はすべてIEEE1888準拠となるため、互換性を持たせることができる。
IEEE1888はインターネットの標準プロトコルである「TCP/IP」を利用できるため、通信をそのままインターネットに流すことができる。NTTデータカスタマサービスは、電力消費量などのデータを受け取り、機器の制御などを担当するサーバーに、IEEE1888の通信を受け付ける機能を追加し、ゲートウェイあるいは機器とそのまま通信できるようにする(図2)。
キャンパス内の建物をIEEE1888で接続する
今回の計画ではまずは太陽光発電システムの発電状況と、建物内の電力需要を見ながら、空調機器の運転状況を制御して、消費電力量を抑える機能から作る。今後は環境エネルギーイノベーション棟にすでに設置してある燃料電池をIEEE1888で接続し、電力需要に応じて燃料電池の運転状況を制御するということや、今後設置予定の蓄電池をIEEE1888を通して制御して、充放電させるということを計画している。
さらに、大岡山キャンパス内にあるほかの建物にもIEEE1888ネットワークを構築し、建物同士がIEEE1888で通信できるようにすることも計画している。建物1つだけの電力需要ではなく、キャンパス内の複数の建物の電力需要を計算できるようになり、発電設備がある建物から、ほかの建物に電力を融通し、キャンパス単位で電力会社からの受電量を抑えることができる。
NTTデータカスタマサービスは、東京工業大学でのシステム構築、運営の経験を生かして、地域単位でエネルギーを効率よく利用するシステムを開発していくとしている。
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