空気熱を使って新幹線の積雪対策、再生可能エネルギーの利用拡大へ:自然エネルギー
JR東日本は駅の構内に太陽光発電や風力発電を導入するなど再生可能エネルギーの活用に積極的に取り組んでいる。上越新幹線では空気熱を使った散水設備を導入して、線路に積もった雪を溶かす試験を続けている。1月から設備の規模を拡大して実用化を目指す。
東京と新潟を結ぶ上越新幹線は豪雪地帯を走るため、線路に積もった雪を溶かす「消雪基地」が32か所もある。通常は河川の水をボイラーで過熱して、線路上にまいて雪を溶かす。JR東日本が新たに取り組んでいる方法は、空気の熱を利用できるヒートポンプによって水の温度を上げることで、ボイラーの加熱量を削減する狙いだ(図1)。
JR東日本は2011年12月から2012年3月の4か月間、新潟県の「金巻消雪基地」に大型のヒートポンプを1台導入して効果を検証した(図2)。散水する範囲は線路の軌道2.4キロメートルにわたり、868本のスプリンクラーから水をまいて雪を溶かす仕組みだ。4か月間の試験の結果、寒冷地でもヒートポンプが有効に機能して、ボイラーの燃料を減らすことができ、CO2排出量を7%削減できることが確認できた。
そこで実用化に向けて2013年1月から、設備の規模を拡大して長期間の実証実験に入る。金巻消雪基地に隣接する「五年消雪基地」にヒートポンプを移設し、さらに2台を追加して合計3台で効果検証に取り組む(図3)。ヒートポンプの加熱能力は電力にして520kW。散水する範囲は3.6キロメートルで前回の1.5倍に延びる。
JR東日本によれば、今回の試験で導入するヒートポンプを使った散水消雪設備は国内の鉄道では最大規模になる。試験期間中にヒートポンプとボイラーを制御するシステムも開発する計画だ。
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