収蔵品を守りながら節電、博物館に向けたBEMSの実証実験が始まる:エネルギー管理
「北九州スマートコミュニティ創造事業」の一環として、市内の博物館の消費電力をBEMSで制御する実証実験が始まった。地域のエネルギーを管理するシステムと連系し、来場者にとって快適な空間を維持しながら、展示品を保護するという難しい要求に応えるシステムの完成を目指す。
実験の対象となるのは「北九州市立いのちのたび博物館」(図1)。CEMS(地域エネルギー管理システム)と連携したBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を設置し、地域単位の電力需給状態に合わせて、最適な形で節電することを狙っている。
この実験計画には、対象施設が博物館であるがゆえの難しさが2つある。1つ目は不特定多数の来場者がある施設であり節電のためとはいえ、施設内の環境を来場者にとって不快なものにすることはできないという点だ。この点は一般の商店やショッピングモール、コンビニエンスストアなども抱える悩みだろう。
もう1つは博物館に展示、収蔵してある文化財を劣化させるような環境を作ってはならないという点だ。展示している文化財には、鎌倉時代や戦国時代の美術品もある。古い美術品は周囲の環境に敏感なものだ。可能な限り温度、湿度などの環境を維持しながら節電しなければならない。
この実験を担当するジョンソンコントロールズは、営業情報、施設内の快適さ、文化財保護に適した環境、気象データ、光熱費といったデータを収集し、先に挙げた条件を満たしながら節電を実現するために、データセンターに専用プログラムを用意した。コンピュータの自動制御で、環境の維持と節電を両立させるつもりだ。
さらに遠隔地に用意したコントロール・センターの係員がエネルギー効率やコストなどを解析し、美術館の運営にアドバイスを送る体制も作った。コントロール・センターでは災害が発生し、電力やガスの供給が止まったときに自家発電設備と最低限動作させる設備を決めて操作する。
CEMSとの連系でデマンドレスポンスや、時間帯別電気料金、節電に対するインセンティブプログラムにも参加し、その効果と可能性を検証する。
この計画では電気使用量を10〜15%削減し、CO2排出量を10%減少させることを目指している。地域の電力需給状態を見ながら、施設内の環境を損なうことなく可能な限り節電するという目標はかなり難しいものと考えられる。この実験が成功すれば、節電が難しいとされている施設でも節電活動が進むだろう。
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