かんがい放流で小水力発電、水力を拡大する北海道電力:自然エネルギー
環境保護を目的にダムから河川に放流する水を生かして発電する方法により、小規模な水力発電所が全国に広がってきた。北海道電力は大型のダムから灌漑(かんがい)のために川へ放流する水のエネルギーを使って、出力880kWの発電設備の営業運転を開始した。
3月15日から営業運転を開始した「朱鞠内(しゅまりない)発電所」は、北海道の北部にある湖と川を利用した小水力発電である。70年前の1943年に人造湖とダムを建設して稼働を始めた「雨竜(うりゅう)発電所」の設備を更新することで実現した(図1)。
雨竜発電所は川の水を湖に引き上げてから発電する揚水式の水力発電所で、もともと朱鞠内には揚水のための設備だけがあった。ただし夏季を中心に灌漑(かんがい)が必要な時期には湖の水を川に放流している。
これまで発電に使っていなかった灌漑放流のエネルギーを利用したのが朱鞠内発電所だ(図2)。70年前に運転を開始したために老朽化していた揚水設備の更新が必要になったことから、揚水機能と発電機能を備えた新型のポンプ水車を発電機と合わせて導入した。
灌漑放流の水量は最大で毎秒4.2立方メートルあり、発電規模は880kWになる。年間の発電量は約70万kWhを見込んでいる。設備利用率(発電効率)は9%程度である。
一方で北海道電力は南部でも水力発電所の建設を進めている。活火山で有名な羊蹄山(ようていざん)のふもとにダムを新設して、揚水式による「京極(きょうごく)発電所」を建設中だ。合計60万kWの発電設備を3期に分けて稼働させる計画で、1号機(発電能力20万kW)は2014年10月に運転を開始する予定である。原子力発電所の再稼働が見込めない中でも、供給力の増強は着実に進んでいる。
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