夏の需要を過大に予測、関西の予備率が3か月連続で3%に低下?:電力供給サービス
政府の委員会が今夏の需給予測を発表した。相変わらず電力会社の報告をまとめただけで、実態を反映していない内容だ。昨年に比べて気温の上昇と景気の回復を見込み、節電効果は減少すると予測している。特に関西は7月〜9月の3か月間を通して予備率が3%まで低下してしまう。
「電力需給検証小委員会」が4月9日にまとめた今夏の需給予測を見ると、予想以上に厳しい数字が並んでいる。特に関西と九州では、電力需要のピークに対する供給力の余裕を示す「予備率」が3%まで低下すると予測している。通常は予備率が3%以下になると電力不足の危険が高まり、停電の可能性も想定しなくてはならない。
実際に委員会の報告書にも「安定的な電力供給には7〜8%以上の予備率確保が望ましい」と書かれている。その条件を満たすのは北海道と中国の2地域だけで、残る7地域は7月〜9月のあいだに予備率が7%を下回る事態になる(図1)。
それほど今夏の電力需給は厳しくなるのだろうか。昨夏や今冬もそうだったが、政府の委員会の需要予測は過大な数値になる傾向がある。というのも、電力会社が報告する予測値をそのまま採用しているからだ。
何としても原子力発電所を再稼働させたい電力会社は需要を大きく見込むことで、供給力が不足する懸念を強調する。この2年近く繰り返されてきたことだ。その結果、昨夏には関西電力の大飯発電所が再稼働し、今夏も運転を続ける。それでも関西電力は7月〜9月の3か月連続で、予備率が3.0%まで低下する予測を出した。
今夏の需要を予測するにあたって、委員会は3つの増加要因を挙げている。昨夏に比べると気温が上昇すること、景気が回復して企業の電力需要が増えること、さらに定着した節電効果が減少することである。しかも震災前の2010年度の夏の実績をもとに算出している(図2)。
各地域の2013年度の需要は2010年度の実績を下回っているために、妥当な予測値に見えるかもしれない。しかし2012年度の実績と比較すれば、過大なことは明らかである。例えば関西は2012年度の最大電力需要が2682万kWだったのに対して、2013年度の予測は6%も増えて2845万kWになっている。もし2012年度の実績値で2013年度の予備率を計算すると、8.6%の安全圏に入る。九州を含めてほかの地域も同様である。
今夏の節電効果が減少するという予測は、電力会社が実施したアンケートに基づいている。節電対策を継続するとの回答が7割強にとどまったためだ。一方で関西・九州・東北・四国の4地域は電気料金を値上げする。それでも節電対策を継続しない企業や家庭が多く出てくるようであれば、電気料金の値上げを許容できることになる。
おそらく電力会社の思惑どおりに需要が伸びることはない。政府の委員会は電力会社の報告に依存する状況から早く脱して、現実的な予測を出すべきである。
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