使用済み核燃料の最終処分をよそに、再稼働を急ぐ原子力発電所の意義は:法制度・規制
東京電力の福島第一原子力発電所で使用済み核燃料に関連するトラブルが続くなか、関西をはじめ各地で原子力発電所の再稼働に向けた動きが進んでいる。原子力規制委員会が設定した新安全基準をクリアすれば再稼働できる見込みだが、重大な使用済み核燃料の処分方法は残されたままだ。
関西電力は稼働中の大飯発電所3号機と4号機に関して、新しい安全基準に適合することを確認した報告書を原子力規制委員会に提出した。追加で必要になる対策は6月末までに完了する予定だ。
新たに安全基準に追加された項目を関西電力は4つの分野にまとめた(図1)。いずれも重大事故(シビアアクシデント)の対策で、「放射性物質の拡散抑制」も含まれている。
とりわけ国民にとって気になるのは、膨大な量の使用済み核燃料の対策である。東京電力の福島第一原子力発電所では使用済み核燃料の冷却プールの容量が限界に近づくなど、処分方法の問題が日増しに大きくなっている。
関西電力は報告書の中で、重大事故によって使用済み核燃料プールの冷却に問題が発生した場合の対策として、「可搬式代替注水設備」と「可搬式スプレイ設備」を6月末までに配備することを記載している(図2)。
この程度の対策で十分かどうかは原子力規制委員会が適正に判断するとしても、一般の目には不安なほど単純な設備に映る。実際に大震災のような非常事態においても問題なく機能することを委員会と関西電力は証明すべきだろう。
もとより使用済み核燃料プールは一時的な保管場所に過ぎず、放射性物質の拡散を防止するためには万全な形で最終処分を実行する必要がある。ところが最終処分に関しては具体的な実行計画すら立てられておらず、結局のところ次世代に委ねてしまう可能性が大きい。極めて無責任な話である。
そのような状況で原子力発電所の再稼働を急ぐ電力会社、後押しする産業界の一部、容認する政府にとって、意義はどこにあるのか。年間に3兆円とも言われる海外からの燃料購入費の増加を抑制することなのか、経営難の電力会社を救済することなのか、あるいは原子力技術開発の重要性を主張する米国からの圧力なのか。
少なくとも火力発電によるCO2排出量の問題が最大の要因でないことだけは明らかだ。原子力発電所が環境を破壊する影響の大きさは東京電力が図らずも福島で実証してしまった。地球温暖化対策は長期的に取り組むべき重要な課題だが、それ以前に放射能汚染対策は待ったなしの緊急課題である。原子力規制委員会には新安全対策の厳格な審査を願うばかりだ。
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