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石炭と天然ガスの火力発電を後押し、環境評価をクリアできる技術基準を公表法制度・規制

燃料費の安い石炭を使った火力発電の必要性が高まってきたことを受けて、経済産業省と環境省が共同で新たな指針を公表した。石炭と天然ガスによる火力発電の最新技術を集約して、環境評価をクリアできる条件として示した。東京電力が7月にも決定する火力発電の外部調達分から適用する。

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 最近まで環境省はCO2排出量の多い石炭火力発電に対して否定的な見解を示してきた。しかし原子力発電所の再稼働が不透明な状況で、燃料費の安い火力発電所を増やす必要性を認識して、このほど経済産業省と共同で新たな指針を公表した。

 今後の火力発電設備に対する環境評価の審査基準として、日本で最先端の「BAT(Best Available Technology)」をクリアすることを条件にする。現時点で最も進んでいる石炭火力と天然ガス火力の技術要素を集約して「BAT参考表(暫定版)」にまとめた(図1)。

 石炭火力であれば、熱エネルギーを電力に変換する効率が40%を超える発電方式を商用段階のBATとして示した。石炭をガス化してからコンバインドサイクル方式で発電する「石炭ガス化複合発電」もBATの中に含まれている。

 一方の天然ガス火力では、東京電力などが最新の火力発電所に採用している燃焼温度1300〜1500度のコンバインドサイクル方式がBATの対象になる。エネルギー変換効率は50%を超え、それだけCO2排出量を抑制することができる。


図1 商用運転段階にある石炭火力と天然ガス火力のBAT参考表(暫定版)。出典:経済産業省、環境省

 さらに高度な試運転段階あるいは実証試験段階にある発電技術もBATの先行指標として提示した。石炭火力では燃料電池を組み合わせた「石炭ガス化燃料電池複合発電」などが盛り込まれた。この発電技術を採用すると変換効率が一気に55%まで向上する。天然ガス火力の場合は燃焼温度を1700度まで引き上げた実証試験段階の発電技術を取り上げていて、変換効率は57%まで改善する。いずれも数年後の商用化が見込まれている。

 経済産業省と環境省が共同で火力発電の技術指針を取りまとめたきっかけは、東京電力が火力発電による電力を外部から競争入札で調達する計画を開始したことにある(図2)。調達価格の上限を1kWhあたり9.53円と低く設定したため、燃料費の安い石炭火力による入札が多くを占めると予想されるからだ。


図2 東京電力が実施する火力発電の競争入札の要件。出典:東京電力

 東京電力は5月24日に入札を締め切って、7月中に調達先を決める予定になっている。石炭火力に否定的だった環境省が経済産業省と共同で発電技術の指針を示したことにより、発電事業者にとっては石炭火力で入札する基準が明確になった。

 両省は今後もBATを年に1回のペースで更新して、火力発電の環境評価基準として幅広く適用する方針である。これと並行して石炭火力発電で生じるCO2を分離・回収する設備「CCS(Carbon Capture and Storage)」の開発を促進していく。2030年までにCCSの導入を石炭火力の必要条件にすることも検討する考えだ。

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