他社の工場で使う電力を発電、なぜなのか:電力供給サービス
伊藤忠エネクスは5つの発電事業孫会社を通じて売電事業に取り組んでいる。同社の特徴は電力会社よりも他社の工場に優先して電力を供給していることだ。2013年7月には山口県防府市に同様の目的で出力3万6000kWの石炭火力発電設備を増設することを発表した。
伊藤忠エネクスは山口県防府市に石炭火力発電設備3万6000kW(36MW)を増設する(図1)。既に整地工事を始めており、2015年3月に完成を予定する。金融機関とプロジェクトファイナンスを組成して実施する。
同社はなぜ発電事業に取り組んでいるのだろうか。「電力・ユーティリティ事業本部を社内に置いたのは2013年4月だ。発電事業に参入して日が浅いため、まずは再生可能エネルギーを含め、各種電源を利用してシェアを拡大しようとしている。メガソーラーを立ち上げて電力会社に売電することよりも、工場などの需要家に直接販売することを狙っている」(伊藤忠エネクス)。これは工場などを持つ法人に直接電力を売り込んだ方が、固定価格買取制度(FIT)を利用した売電よりも高額で販売できるためだ。今回の増設も、見込み客を確保した結果の投資だ。増設前時点では、工場向けに販売した残りを大阪ガスや日本卸電力取引所(JEPX)に販売している。
既存の設備を流用する
今回増設する火力発電設備は、同社の孫会社である防府エネルギーサービスの工場敷地内(図2)に置くため、土地を新たに確保する必要はない。防府エネルギーサービスは微粉炭石炭ボイラーを用いた出力4万9750kWの石炭火力発電事業を既に運営しているため、増設する設備は主に蒸気タービンと発電機である。いずれも三菱重工業に発注した。現在発電機などを三菱重工業の工場で製造中であり、2014年4月には建設予定地への搬入を予定している。
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