全ての住戸に「蓄電池」を、川崎市に建つ高層マンションの工夫とは:スマートハウス(2/2 ページ)
三井不動産レジデンシャルは、住戸と共用部の電力に工夫を凝らした新築マンションを開発中だ。制御では日立製作所と、リチウムイオン蓄電池では日立マクセルと協力し、高度なMEMS対応マンションを実現しようとしている。
マンション全体をHEMSとMEMSで管理
日立製作所はMEMSアグリゲータとして、マンション各戸内のHEMSを束ねてマンション全体のエネルギー管理を行う*3)。
*3) パークタウン新川崎が立ち上がる土地は、もともと日立精工エンジニアリング(現在は日立ビアメカニクスと経営統合)の敷地であったため、電力関係の設計について優先契約を得たという。
電力制御から見たパークタワー新川崎の構成を図3に示した。マンション全体がMEMSアグリゲータである日立製作所のサービス(白い箱で示した)とつながっている。
平常時の制御を図3上の青枠内で示した。電力の需給バランスに課題がない場合は、各戸内のHEMSが電池と家電を制御し、電力の見える化を実行する。蓄電システムの容量や住戸全体の消費電力、エアコンや照明など個別の消費電力を自動計測した結果だ。蓄電池は動作状況が見た目で分かりにくいため、LAN経由で監視し、稼働状況や故障検知結果をメールで各戸に送るように設計した。この他、遠隔地からの生活家電の電源制御が可能だ。エアコンと床暖房、給湯器を制御できる。
節電も支援する(図4)。電力の使用量を比較表示する他、簡単なアドバイスも示す。あらかじめ設定した電力目標値に近づいた場合や、以下で紹介するように電力事業者から使用制限の要請があった場合にはアラームメールを送る機能がある。
図3下に示したオレンジ色の部分は停電などの非常時の動作だ。Energy Station Type Cの容量は1.4kWhあり、満充電状態なら800W出力で最大80分間の連続運転が可能だ。ダイニングの照明と、リビングのコンセント1カ所、冷蔵庫、テレビやインターネットの通信設備を使う場合は、電力が350W程度必要だと考えられる。この場合は約3時間連続使用が可能だ。蓄電池の出力する電力は、系統電力とは異なる配線を通じ、専用のコンセントから家電に給電する。
なお、蓄電池にはUPS(無停電電源装置)機能が備わっており、停電を自動検知して100分の1秒(10ms)以内に出力を切り替えることもできる。
共用部には非常用の電源を3種類用意する。最も確実なのが、共用部に72時間電力を供給可能な非常用発電設備だ。この他、屋上に設置した太陽光発電システム(容量未定)と電気自動車が蓄電した電力を取り出す仕組みを設けた。カーシェアリング用の電気自動車(日産LEAF)を2台共有部に備える。
関連記事
- 街ごとエネルギーゼロ、パナホームが芦屋と草津で実現
消費するエネルギーよりも作り出すエネルギーが多い - マンションでも「全戸」太陽光、高度なHEMSと組み合わせる
1戸当たり1250W - マンションの電気料金を10%削減、「高圧一括受電」と太陽光発電で
高圧一括受電は電気料金削減の1つの策 - マンションの電力を削減、タブレット端末を200世帯に配布
自動制御だけに頼らない電力削減策 - マンションの電力を集中管理する「MEMS」
キーワード解説
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.