やっかいな積雪を逆に利用、旭川市で始まる両面発電と融雪:自然エネルギー(2/2 ページ)
メガソーラーにとって、積雪はなるべく避けたい条件だ。雪に覆われた太陽電池は発電できず、雪の重みに耐える機材も必要だ。旭川市で始まった事業では雪を避けるのではなく、利用する。太陽光を反射する雪の性質と、両面発電可能な太陽電池を組み合わせることで、出力を1.1〜1.3倍に高められるという。もはや雪は敵ではないのだ。
融雪目的の実証実験も兼ねる
今回のメガソーラーには効率的な発電、売電の他に、もう1つの目的がある。融雪だ。
「旭川北都ソーラー発電所には、見学者用に独立した4kW分の太陽電池モジュールを設置することが決まっていた。本体同様、PVG Solutionsの技術を使った16枚のモジュールだ(図3)。だが、冬季には見学はできない。そこで、同モジュールの電力を使って、メガソーラーのゲート前のロードヒーティング(道路融雪)を計画していたところ、北海道庁からクラレリビングの技術を紹介されたため、共同実証実験に参加することになった」(西山坂田電気)。クラレリビングとPVG Solutions、西山坂田電気が北海道庁と協力して進める実証実験だ。
「両面受光型太陽電池による発電を直接利用した自立型融雪システムの実証試験」では、2013年12月から2017年3月まで実証を続ける。両面受光型太陽電池から得た電力を、ゲート部の12m2のエリアに設置したクラレリビングの「CNTEC」融雪マットに通じるというものだ。
CNTEC融雪マットは、カーボンナノチューブ(CNT)をコーティングした導電繊維「CNTEC」を織ったファブリックヒータ−を使う。これを絶縁性ゴムに封入して、80cm×150cmのマットとした。図4左のように全面が均一に発熱し、熱伝導効率が高いことから、ニクロム線ヒーターと比較して約20%の省エネ効果があるという。融雪には通常1m2当たり300Wの電力が必要になるが、これを250Wに抑え、さらに外部電源を使わないことが実証実験の目標だ。
【訂正】記事の掲載当初、PVG Solutionsの社名と元旦ビューティ工業の太陽電池モジュールの名称を誤って表記しておりました。1ページ目の第7段落で「2012年3月から旭川市内で……」としておりましたが、正しくは「2012年6月から旭川市内で……」です。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。なお、掲載当初はメガソーラーとは別に着工した出力250kWの太陽光発電所の名称を示しておりませんでしたが、2013年12月19日に追記いたしました。
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連載:エネルギー列島2013年版(1)北海道
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