落差を探して99カ所目、広島県で水路式水力発電:自然エネルギー
勾配が急な水路は小水力発電の設置に適している。中国電力は既存の分水路のうち、勾配が急な部分を探し、建設コストを抑えつつ、発電量を最大化できる立地を求めた。広島県北広島町である。
水力発電所を低コストで開発するには未利用エネルギー(落差)を探し、既存の設備を活用しつつ、新設しなければならない設備を簡素化する。中国電力はこのような方針に従って、新たに水路式の水力発電所を立ち上げる。出力430kWの「芸北(げいほく)発電所」(広島県北広島町)は同社の99カ所目の水力発電所となる予定だ(図1)。
2014年3月24日、中国電力は北広島町に建設計画を説明。順調に進めば、2014年6月に着工し、2016年3月に運転開始が可能だ。年間発電量は約223万kWhであり、一般家庭約600世帯の年間使用電力量に相当する規模である。
図2には芸北発電所の周辺の川とダムの分布を示した。地図の一辺は約10kmだ。左上の大佐川に掛かる大佐川分水ダムからは、北東の滝山川に向かって点線が伸びている。大佐川分水路だ。これを活用する。
大佐川の方が、滝山川よりも高い位置を流れているため、分水路の水は滝山川に向かって流れ下っている。
図3上は、大佐川分水路(点線)と新設する水圧管路(赤線)の配置を示したもの。既存の分水路を途中まで利用しつつ、赤字で示した取水口と水槽、芸北発電所を新設する。
なぜ途中まで既存の分水路が利用できるのか。その疑問に答えるのが図3下だ。大佐川から県道11号までは落差があまりないため、水圧管路を新たに建設する意味が薄い。
県道11号を超えると分水路の勾配がきつくなる。この位置エネルギーを取り出したい。そこで県道11号と滝山川の間を新たに水圧管路で結ぶ。未利用落差のうち、有効落差27.5mを確保できる。最大使用水量は2.0m3/秒である。
【変更履歴】 記事公開後、3月31日に記事タイトルを変更いたしました。
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連載:エネルギー列島2013年版(34)広島
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