2種類の蓄電池が太陽光と風力に対応、離島で電力の安定供給を図る:電力供給サービス
太陽光発電と風力発電は天候によって出力が変動するが、その変動パターンには大きな違いがある。特性の異なる2種類の蓄電池を使い分けて、太陽光と風力の出力変動を吸収する実証事業が島根県の隠岐諸島で始まる。離島の再生可能エネルギーを拡大するために、日本で初めて取り組む。
島根県の隠岐(おき)諸島には、人が住む島が4つある(図1)。このうちの西ノ島で日本初の実証事業が2014年度中に始まる。2種類の大型蓄電池を組み合わせて、太陽光発電と風力発電の出力変動を抑制する試みだ。離島の再生可能エネルギーを拡大するために環境省が補助金を提供して、中国電力が3年間かけて実施する。
隠岐諸島には風力発電所が1カ所あって(図2)、さらにメガソーラーの建設計画が進んでいる。風力発電では風速によって短い周期で出力が変動する。対して太陽光発電は雲の動きに伴って短い周期で出力が変動するほか、1日のあいだに太陽の位置が移動するため長い周期でも変動する。
こうした複雑な出力の変動が大きくなると、送電する電力の周波数が不安定になって、電力を受ける側の電気機器で誤作動などが生じてしまう。特に離島のように送電能力が低い地域では、出力変動による影響が出やすい。
隠岐諸島の実証事業では、短い周期と長い周期の両方の出力変動を緩和できるように、2種類の蓄電池を組み合わせたハイブリッドシステムを導入する。短い周期の出力変動をリチウムイオン電池で対応するのと同時に、長い周期の出力変動をナトリウム硫黄(NAS)電池で吸収する仕組みだ(図3)。
電気自動車にも使われるリチウムイオン電池は、小容量ながら大出力の特性があり、電力が小さく変動し続けても充電・放電を細かく実行して安定化を図ることができる。一方のNAS電池は大容量が特徴で、長い時間にわたる電力の大きな変動を吸収するのに向いている。この2種類の蓄電池を効率よく協調させる制御技術を確立することが実証事業のテーマになる。
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