日本でも商業生産が始まる「シェールオイル」:キーワード解説
石油を燃料に使う火力発電は現在でも日本全体の発電量の1割以上を占める。ほぼ100%を輸入に頼る石油だが、北海道や東北、新潟県などには油田がある。これまで石油を産出してきた地層とは別の層に含まれているのが「シェールオイル」である。いよいよ商業生産が秋田県内で始まる。
国内外に油田やガス田を所有する石油資源開発(JAPEX)が秋田県内の2カ所で、「シェールオイル」の商業生産に向けた掘削作業を進めている(図1)。シェールオイルは米国で大量に産出が始まったシェールガスと同様に、「頁岩(けつがん、shale)」に含まれている。
通常の石油や天然ガスは柔らかい砂岩層から産出するのに対して、シェールオイルやシェールガスは泥岩層の中でも硬い頁岩から産出する。掘削が難しいために、これまで商用化が遅れていた。ようやく掘削技術が進化して、日本でも2014年4月から商業生産を開始する。
JAPEXが秋田県の由利本庄市に所有する「鮎川油ガス田」で実施する予定で、1日あたり約35キロリットルの原油をシェールオイルから生産できる見通しだ(図2)。年間で1万2000キロリットル程度の産出量になり、2012年度の国産原油産出量(76万キロリットル)の1.6%に相当する。
さらに同じ秋田県内の「福米沢(ふくめざわ)油田」では、鮎川油ガス田とは別の方法による掘削試験を2014年5月中に開始する。鮎川油ガス田では既存の油井に酸を注入してシェールオイルを取り出している。これに対して福米沢油田で実施する方法は油を含む層にひび割れを入れて抽出する(図3)。従来の方法よりも生産能力が高くなる見込みである。
2カ所の油田には「女川タイトオイル層」と呼ぶシェールオイルの層が地下1300〜1500メートルで確認されている。この層は秋田県に広く分布していることから、福米沢油田で実施する掘削試験の成果をもとに他の場所でも開発を進めていく計画だ。新たな国産の原油生産にかかる期待は大きい。
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