大型風車の落下事故から丸1年、地元の理解を得て再建設が始まる:自然エネルギー
2013年4月7日に三重県で発生した大型風車の落下事故から1年が経過して、事故機の再建設が始まった。従来と同じメーカーの直径83メートルの風車を使って7月に運転を開始する予定だ。事故原因の究明と再発防止策の実施を迅速に進めたことが地元の理解につながった。
三重県の津市と伊賀市にまたがる「ウインドパーク笠取」の風車落下事故は、直径83メートルもある大型風車が破損して地上に落下したことから、風力発電の安全性を大きく揺るがす発端になった。その後も全国の風力発電所で事故が相次いだが、事故の原因究明と再発防止策の実施に関してはウインドパーク笠取の対応は早かった。
ウインドパーク笠取は発電能力が2MW(メガワット)の大型風車を合計19基で構成する(図1)。国内有数の規模を誇る風力発電所だが、その中で最も東側にあった19号機が事故を起こした設備である。残る18基は点検と再発防止策を講じたうえで、事故から3カ月後の2013年7月に運転を再開した。
この風力発電所を運営するのは中部電力グループのシーテックである。19号機の再建設を2014年3月に経済産業省に届け出ていた。地元の自治体や自治会にも説明して理解を得たうえで、事故から丸1年を経過した4月14日に着工した。発電に必要な電気室の工事から始めて、6月中旬に風車の組み立てを開始する予定だ。7月上旬に試運転、中旬には営業運転に移行できる見込みである。
再建設する風力発電設備は他の18基と同様に、日本製鋼所の製品を採用する。従来と同じ直径83メートルの風車を、高さ65メートルのタワーに取り付ける計画だ。シーテックと日本製鋼所にとっては失敗の許されない再建設になる。
1年前に発生した事故の原因は、発電機の内部に使われていた部品の強度にあった。部品が摩耗してブレーキがきかなくなり、強風を受けた風車が過回転の状態になってタワーに接触して破損した(図2)。メーカーの設計・製造に問題があったわけだ。幸いにも人家に被害は及ばなかった。この事故を教訓にして風力発電設備の安全対策が進化することを望みたい。
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