製鉄会社の高炉跡地に石炭火力発電所、2021年に140万kWで運転開始へ:電力供給サービス
神戸製鋼所は電力会社の競争入札に向けて、主力の製鉄所の構内に相次いで火力発電所を建設する計画だ。すでに大規模な石炭火力発電所を運転中の神戸市内の製鉄所に、新たに140万kWの火力発電設備を増設する。2017年に休止する高炉の跡地を利用して、発電事業の拡大に乗り出す。
神戸製鋼所が火力発電所を建設する場所は、神戸港に面して広大な敷地がある「神戸製鉄所」の構内だ(図1)。隣接する地区には2002年と2004年に稼働した「神鋼神戸発電所」が運転中で、卸供給事業者(IPP=Independent Power Producer)として関西電力に140万kWの電力を供給している(図2)。
新たに神戸製鉄所の主力設備の1つである「第3高炉」の跡地に、最新鋭の石炭火力発電所を建設する。高炉は鉄鋼の原料である鉄鉱石を溶かすための設備で、大規模な製鉄所には欠かせない。ところが鉄鋼の需要が長期的に減少することが見込まれ、第3高炉は2017年に休止することが決まっている。
この跡地を利用して、発電能力が140万kWの石炭火力発電所を新設する計画だ。現在の石炭火力発電の中では最も効率が高い「超々臨界圧」を採用する。すでに東京電力が福島県の「広野火力発電所」に導入して、2013年12月に45%の発電効率で運転を開始した最先端の技術である。
神戸製鋼所は石炭火力発電所を新設して、関西電力が実施する火力電源の競争入札に応札する方針だ。関西電力は2021〜2023年度に発電を開始する火力電源として150万kW分の調達を決めている。競争入札では特に価格を重視することから、燃料費の安い石炭火力が有利になる。
実は神戸製鋼所は2013年に東京電力が実施した競争入札を想定して、栃木県の「真岡製造所」の隣接地に140万kWのガス火力発電所の建設も進めている。ただし東京電力の入札上限価格が安く設定されたために、ガス火力では応札することができなかった。東京電力が2014年度にも調達量を拡大して競争入札を実施することになり、上限価格を引き上げる可能性が大きいことから、改めて応札する見通しである。
神戸製鋼所のほかにも、製鉄大手では新日鉄住金やJFEグループが発電設備の増強を進めて、IPPとして電力の供給量を拡大している。これから電力市場の自由化によって発電事業者の存在価値が高まる中、膨大な資産と技術を有する製鉄会社の発電事業が加速していくことは確実だ。
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